令和の今も作成依頼「デスマスク」への遺族の想い 夏目漱石の死に顔やコロナで逝った少年の手形も

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夏目漱石のデスマスク(複製品/漱石山房記念館所蔵、筆者撮影)
OSINT(オープンソースインテリジェンス)が注目される昨今、人生の終わりに触れられるオープンソースも存在する。情報があふれて埋もれやすい現在において、今は亡き個人の物語を拾い上げて詳細を読み込んでいきたい。

100年前に亡くなった漱石を眺める

2017年に開館した新宿区立漱石山房記念館は、夏目漱石(1867-1916)が晩年を過ごした住まい、通称・漱石山房の跡地に建つ。当時の書斎や庭園を細部にわたって再現しており、文豪の暮らしと仕事の空間を今に伝える。

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2017年に開館した漱石山房記念館(筆者撮影)

館の所蔵品のひとつに漱石のデスマスクがある。漱石が息を引き取った直後、門下生の森田草平(1881-1949)が師のデスマスクを取ることを提案し、遺族の同意を得たうえで彫刻家の新海竹太郎(1868-1927)に依頼して制作された。4月21日まで開催している通常展「夏目漱石と漱石山房 其の一」で公開中だ。

当時作られたデスマスクは2つあり、そのうちひとつは夏目家の仏壇の脇に飾られていた。次男で随筆家の夏目伸六(1908-1975)は、子供の頃によくお面代わりに被っていたそうだ。ところが、そちらは1945年5月25日の空襲で家屋ごと焼失してしまった。

現在展示されているデスマスクは、残りひとつの現品である朝日新聞社所有のものから夏目漱石生誕100年を記念して1966年に複製されたものだ。当時の所有者は門下生の松岡譲(1891-1969)。漱石山房記念館名誉館長の父にあたる。

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