TSMC、驚くべき顧客サービスとコスト管理の実態 TSMCを追った経済記者と現役エンジニアが対談

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30年以上TSMCを追い続けた記者と関わり続けた半導体エンジニアがTSMCのすごさや課題を語り合う(対談前編)

TSMCのロゴマーク
今や現代社会が頼りきっている台湾のTSMC(写真:Lam Yik Fei/The New York Times)
世界最大かつ最先端の半導体受託製造企業、台湾のTSMC。今や日本でも知られるようになったTSMCをわかりやすく深く解説した本が『TSMC――世界を動かすヒミツ』だ。
30年以上にわたり同社を取材し続けて本書を執筆した台湾の経済ジャーナリスト、林宏文氏と、日本の半導体エンジニア、情ポヨ氏が対談し、本書とTSMCについて語り明かしてもらった(モデレーター:劉彦甫・東洋経済解説部記者)

償却短く、コストでも強いTSMC

:情ポヨさんは約30年間世界の半導体企業と取引され、現場を熟知しているエンジニアとして林さんの本を読まれて、いかがでしたか。

情ポヨ:とても感動しました。1冊に30年間の林さんの経験が詰まっており、私が理解しているTSMCの歴史と強みも深く解説されており、読みながら何度もうなずきました。

:情ポヨさんはTSMCにとても詳しいのですね。

情ポヨ:TSMCとも長年仕事でお付き合いしてきました。エンジニアの視点として、本書でTSMCの強みについて減価償却を5年で終わらせている早さに言及していることには驚きました。コスト競争が厳しい半導体業界で重要なポイントです。

日本でも半導体製造に使われるシリコンウェーハを製造する企業で償却期間の違いが競争力の差につながっている面があります。たとえば信越化学工業のウェーハ製造部門は短期間で償却することが多いですが、ほかの同業は7年や10年です。

業界内では当然の認識ですが、一般の読者向けに技術力だけでなく減価償却などコストへの考え方もTSMCの強みだとしっかり紹介したのは日本ではあまりありませんでした。

日本でよく知られるTSMCの技術力について林さんは本の中で「2000年にあった130ナノメートルのプロセス技術をめぐる開発競争の結果が今の競争力の差につながる契機だった」と指摘しています。当時は、シリコンウェーハの口径も8インチから12インチと拡大して、プロセス技術の発展と相まって、技術優位な会社が一気に成長しやすい時期でもあったと思います。

:私は台湾の国立交通大学の電気工学部出身の理工系です。友人たちのように私はエンジニアにはなりませんでしたが、技術的な理解はあり、ご指摘のようなシリコンウェーハの拡大も重要な要素だと思います。

2000年に台湾では半導体大手のTSMCとUMCがまさに技術開発を競っていました。UMCはプロセス技術の開発でIBMと連携しましたが、TSMCは独自開発の道を選びました。

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