TSMC劉・前会長が語る「TSMCが次に目指すもの」 国際政治の荒波を乗り越え「世界のTSMC」になった秘訣

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劉徳音・前会長「今のTSMCは台湾のTSMCではなく、世界のTSMCだ」(写真・台湾『今周刊』)

TSMCの董事長(会長)職を先日退任した劉徳音は、世界の科学技術産業の動向を知るうえで、最も注目されている人物だ。2023年に同社は2.15兆元(およそ10.38兆円)を売り上げ、張忠謀から董事長のバトンを引き継いだ2018年に比べ、109%の成長を実現した。

しかし、今回80分にわたるインタビューでは、同社の数字の成長についてはほとんど口にすることはなかった。むしろ劉は、「今のTSMCは台湾だけのものではない。世界のTSMCだ」と言い切る。また劉は同社を、中国を含めた世界が絶対に必要とするような存在にならなければいけないと力を込める。

国際政治の荒波にもまれた同社は、さまざまな分野で貴重な経験を獲得する。そのうえで同社は近い将来、間違いなく人々を魅了してやまないエキサイティングな会社になると語ったのだ。

「TSMCはもっと存在感をアピールすべきだ」

2018年に台北で開催されたフォーラムでの出来事だった。アメリカ在台協会のリチャード・ブッシュ元代表から、アメリカで出版された『All Measures Short of War』の著者を紹介されたのだ。

同書を直訳すれば「戦争以外のあらゆる手段」だろう。要するに米中はすでに火花を散らしており、かろうじて戦火を交えていないだけという意味である。

著者はトーマス・ライト、アメリカのブルッキングス研究所のシニアリサーチャー。劉に会うなりTSMCの現状を聞き、そしてアメリカの心配を語ったのだ。劉はこの時、アメリカの心配とは、同国の大半の半導体製品を台湾が握っているというものだと感じた。

一方、劉はオバマ大統領時代からすでにアメリカは中国とはあつれきが生じていたと振り返る。当時、TSMC内では世界がどこに向かっていくのか議論が始まっていた。

社内ムードがそのような中で、トーマス・ライトとの出会いがあったのだ。劉は警告のように感じ、改めてTSMCは国際政治で重要な役割を担っていると認識する。

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