半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、地球上で最も地政学的に不安定な場所の1つである台湾で事業を行っている。
そのためアメリカ政府関係者々は非常に神経質になっている。半導体業界で大きな存在感を示すTSMCはアメリカにとってはなくてはならない企業だが、中国の沖合からは約130キロしか離れていない。
アメリカ政府は、アメリカ国内での半導体事業を強化するために数百億ドルを費やし、台湾併合のための武力行使を放棄していない中国から遠く離れたアメリカにおけるTSMCの新興事業に資金を援助している。
1世代の技術には3000人の技術者が必要
しかしTSMCは40年近くにわたり数十億ドルを投資し、台湾に深く根を下ろしてきた。台湾では、シリコンのプレートに細胞よりも小さな電子回路をエッチングしてチップを製造するという、非常に複雑な作業に従事する、かなりの数のエンジニア、研究開発科学者、技術者、生産労働者を雇用している。
TSMCの劉徳音(マーク・リュウ)会長は、TSMCが台湾で築き上げたものを再現するのは非常に難しいと述べた。同社の最先端のチップを急速なペースで開発・生産するには、膨大な労力が必要であり、1世代の技術には3000人ものリサーチ・サイエンティストが必要だと同会長は言う。
「他の場所に移すことはできない」と、会長は断言する。
TSMCは世界的拡大に乗り出しており、アメリカに2つ、日本に1つの工場を建設中のほか、ドイツにも施設を設ける予定だ。これは、台湾製チップへのアメリカの依存度を下げるというアメリカ政府当局者の要請に応えるための同社の戦略の一環だ。