また、TSMCの建設費だけでも台湾の4倍以上になる可能性があるアリゾナで製造されるチップに、アメリカ企業がおそらく割高になりそうな金額を支払うかどうかも疑問視されている。劉会長は、アメリカ政府に対し、アメリカ製チップを購入してもらうには、CHIPS法の520億ドルの補助金以上のインセンティブをアメリカ企業に提供する必要があると述べたという。
「そうでなければ、売り上げは限定的なものになるだろう」と会長は述べた。「すぐに限界が来る。だから、それが議題に上がっているのだ。しかし、まだ解決策があるとは思えない」。CHIPS法のインセンティブを担当する商務省は、特定の企業についてのコメントを避けた。
トランプ元大統領も熱心に誘致に動いた
2018年、ドナルド・トランプ大統領政権下の商務省は、同社にアメリカへの投資を促したと劉会長は述べた。また、TSMCの複数の顧客が業界の会議で劉会長に個人的に接触し、アメリカにおける製造のプレゼンスを確立する必要性を表明した。会長は状況が変わりつつあることを感じたという。
「TSMCの技術は現在最先端なので、少しグローバルに舵を切る時かもしれないと考えたが、将来はどうだろうか」と、劉会長は問いかけた。
やがてトランプ政権下の国務省は、国家安全保障を理由に、F-35戦闘機のような軍用機器における先端チップの役割を強調し、TSMCを説得し始めた。経済成長・エネルギー・環境担当のキース・クラック国務次官は、劉会長とマイク・ポンペオ国務長官、ウィルバー・ロス商務長官との電話会談を設定した。
劉会長は、TSMCはアメリカの半導体産業の「触媒」作用を促すために必要だとクラック次官が述べたことを振り返った。
「アメリカは我々の顧客の65%が居住する場所であるため、これは私にとっても重要なことだ」と劉会長は語る。「彼らには異なるニーズがあり、我々にもチャンスがある」。
本記事はニューヨーク・タイムズ紙に8月4日に掲載されたものです
(執筆:John Liu記者、Paul Mozur記者)
(C)2023 The New York Times
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