TSMC劉・前会長が語る「TSMCが次に目指すもの」 国際政治の荒波を乗り越え「世界のTSMC」になった秘訣

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近年、SDGs対応が製造業にとって大きな課題になっている。しかしTSMCでは2020年に、デンマークのオーステッド社と920メガワットの風力発電に関する購買契約を結んだ。洋上風力発電の購買契約としては、世界最大のものだった。

当時の状況を劉は次のように振り返る。

「あの頃、台湾ではどのように風力発電を進めるべきか議論が始まったばかり。風力発電業者と長期の大型契約を提携しようと、誰も思わなかった」

 

また、発電業者側も受注がないため、資金を借り入れられず、設備投資が思うように進まなかったのだ。そのような中で、TSMCはまずは自分たちが率先して進めるべく動き出す。

台湾のグリーンエネルギーを買い占める

「今では、台湾のグリーンエネルギーは私たちが買い占めてしまったと言うけど、そもそも当時は誰も買おうとしなかったのだ」

 

オーステッド台湾の汪欣潔董事長も、当時は自分たちの行動が他社に影響を与え、グリーンエネルギーに対する受け入れにつながればいいくらいにしか思っていなかったと語る。

またTSMCは、グリーンエネルギーの他に水や廃棄物の再処理、生物多様性についての保護活動、およそSDGsのすべての分野で目標を立てている。

劉はTSMCの顧客は世界最先端の企業群であり、彼らの出身国では環境や気候変動についての要求レベルが高いからだと語る。

そして昨今、社内で一番語ったキーワードは「グリーンプロダクト」と「(世界に)出て行く」だったと言うのだ。

アメリカや日本、ドイツに新工場を建設することは、TSMCの世界に出て行くことにつながっているが、劉は、単に台湾から出て行くことだけではないと言う。

「私は社員に会社の外の世界に出て行くように勧めている。会社という象牙の塔にこもるのではなく、世界の変化を感じ取るべきだ」
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