絶頂のTSMCでも競争力維持で直面する3つの課題 企業文化、グローバル化、人材など課題はある

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TSMC熊本工場とくまモン
TSMC熊本工場(JASM)の開所式にはくまモンも来るなど日本と台湾の連携成功の代表例になりつつある(写真:Bloomberg)
世界最大かつ最先端の半導体受託製造企業、台湾のTSMC。今や日本でも知られるようになったTSMCをわかりやすく深く解説した本が『TSMC--世界を動かすヒミツ』だ。30年以上にわたり同社を取材し続けて本書を執筆した台湾の経済ジャーナリスト、林宏文氏と半導体エンジニア、情ポヨ氏が対談し、本書とTSMCについて語り明かしてもらった(モデレーター:劉彦甫・東洋経済解説部記者)

(前編はこちら

:TSMCはアメリカでも工場を建設していますが、さまざまな問題が起きて工期も遅れて苦労しています。一方でJASM(TSMC熊本工場)はすでに開所し、第2工場の建設も決まるなど順調です。

前編で林さんが指摘されたように日本と台湾がそれぞれの短所を補って長所を生かしている事例になりそうです。ただ、現場からはいくつか問題が出始めているとの声も聞きますね。

高給だけどハードワークな半導体産業

:実際、私も熊本工場に関して懸念する記事もみました。熊本に派遣された台湾人エンジニアの妻がSNSに投稿した話が紹介されており、日本人従業員は定時で仕事を終えて帰ることに彼女は驚きを受けているそうです。台湾人エンジニアの夫は朝の7時くらいには家を出て工場に行き、夜の10時くらいに帰宅するのに、と。働くことに対する意識の差が出ているようです。

実は台湾の若者も今の日本人と同じような傾向が出ています。TSMCの離職率は4~5%ですが、入社1年以内の場合は15%程度です。3倍以上もあるわけです。ただ、これは十分に理解できます。私の子どもたちも今から就職する世代ですが、私たちの世代とは考え方が違います。

情ポヨ:(1年以内の離職率が)17%になったこともあると聞きます。私も子どもがいますが、半導体業界は薦められませんでした。

:半導体業界はかなりのハードワークだからですか。

情ポヨ:ハードワークになりかねないし、日本の半導体業界は給料がよくありません。TSMCはハードワークに見合う給料ですけど(笑)。

:TSMC熊本工場も日本では給料が高いと言われていますが、本当に高給を得ようとすると残業が必須です。TSMCに入社するのは台湾でもトップの大学院を出た人たちで、年収は1年目から200万台湾元(日本円で約1000万円)で、物価水準の違いを考えれば日本で1500万~2000万円程度の給料をもらっている感覚です。その分、かなりのハードワークです。

情ポヨ:責任もかなり重いです。

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