劉:働き方に関する考え方や文化の違いが、将来的にJASMで台湾人と日本人との間で問題になっていくと思いますか。
林:先ほど紹介したのは一部の話なので全体がどうなるか私はまだわからないと思っています。日本人は勤勉で真面目に仕事をしています。確かに働き方改革や若者世代における価値観の変化で長時間労働を避けるようになっているのは事実ですが、欧米よりも儒教的価値観が残る東アジアのほうが勤勉であることに変わりはないでしょう。
熊本工場で起きつつある文化の衝突
情ポヨ:JASMにはソニーから多くのトップエンジニアが派遣されており、実際に文化の衝突が起きています。
たとえばある装置の立ち上げ時には、日本人エンジニアはその装置がもつスペックの100%を発揮させようと調整します。一方で、TSMCからきた台湾人エンジニアは生産ライン全体をみて、個別の装置については95%できていればオッケーとします。
日本人は個別最適を求めて、細かくこだわろうとしますが、台湾人は全体最適を考えて物事を早く進めようとします。ここで方針が衝突して、現場で対立が生じています。
林:ご指摘の点は私も理解できます。前編でも触れた台湾の人の長所である、「儲けるのが得意」に通じる話です。
台湾企業がシェア世界トップを占めるパソコン製造でも同じことがいえます。PC産業の発展時から、たとえば良品率が95%確保できればどんどん出荷していました。すぐ稼ぎたいからです。99%、100%に高めていこうと調整に時間をかけていると半年から1年で市場がなくなってシェアを失いかねません。
情ポヨ:台湾企業はタイミングを大事にしますね。
林:今のTSMCも生成AIブームの中、供給が需要に追いつかない状況でエヌビディアの製造受託をなるべく早く出荷しようとしています。TSMCだって良品率はかなり高い水準を出しているので、エヌビディアやアップルは生産を委託するわけですが、顧客が許容する範囲内で生産のスピード感を保ち、タイミングを逃さないようにものすごく努力しています。
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