世界がほしがる企業となった台湾のTSMCだが、その躍進の理由を現役の半導体エンジニアが現場視点で分析する。
熊本で今年の2月に新しい半導体ファブ(工場)を開設したTSMCについて、経済界のみならずメディアでも見かけない日はないほど話題が絶えない。すでに多くの識者やメディアがTSMCの存在に驚いた日本の人たち向けに同社の躍進についてたくさんの解説を行っている。
筆者は先日、TSMCを30年以上取材して『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)を上梓した台湾の経済ジャーナリスト林宏文氏と対談する機会を得た。その対談は東洋経済オンラインで「TSMC、驚くべき顧客サービスとコスト管理の実態」、「絶頂のTSMCでも競争力維持で直面する3つの課題」の2回にわたり掲載されたが、対談では語り切れなかったTSMC躍進の理由を林氏とは異なるエンジニア視点でさらに解説したい。
2001年にライバルと差をつけたTSMC
TSMCとの比較によく出される企業に台湾の半導体受託製造大手であるUMCがある。UMCは一足早く1980年に設立され、当初は受託製造専業ではなくインテルやサムスン電子と同様に設計から製造まで手掛けるIDM(垂直統合型デバイスメーカー)だった。
それに対し、TSMCは1987年に世界初の専業ファウンドリ(受託製造)として設立された。UMCは1995年にIDMからTSMCと同じく専業ファンドリに事業形態を軌道修正し、2000年まで両社は激しく競いあっていた。
図1に両社の売上高と利益率の推移を示す。両社は2001年以降大きく差が開いていったことがわかる。特にTSMCが2008~2009年のリーマンショック時においても40%を超える営業利益率を維持しているのは、ファウンドリ業界のガリバーとして簡単に替えが利かない存在ということを象徴している。
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