TSMC、驚くべき顧客サービスとコスト管理の実態 TSMCを追った経済記者と現役エンジニアが対談

✎ 1〜 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

:情ポヨさんが紹介してくれた2つのエピソードはとても興味深く、TSMCを表すすばらしいエピソードです。情ポヨさんに取材して、改めて本を書かないといけませんね(笑)。

TSMC社員の旺盛な好奇心はインセンティブを会社が与えていることも影響しているでしょう。TSMCでは成績や実績がよければ追加で多額のボーナスが出ます。多くの日本企業はここまで明確な差をつけてないでしょう。

林宏文、情ポヨ両氏の対談
TSMCや半導体業界などについて対談する林宏文氏と情ポヨ氏(撮影:尾形文繁)

台湾の半導体企業は伝統的な日本の同業企業と違い、ある企業グループの傘下で始まったわけでなく、TSMCを含めて小さな会社から始まりました。企業文化や社員の一人一人にアントレプレナーシップ(ベンチャー意識)が今も強く残っています。

そして情ポヨさんが指摘したように、より大きな仕事をしたいという思いもあります。研究開発部門に就職した大学時代の友人は報奨だけでなく、達成感を求めてもいます。自分の製品が世界で使われることを誇りに感じ、TSMCの製品が世界で使われるという頂点に立った達成感を求めています。

儲けに強い台湾と研究開発が得意な日本

:コスト意識について日本企業と台湾企業を比較するときに、私はよく大同電鍋という60年以上前に生まれた調理器具を例に出します。台湾のほとんどの家庭がもっている、炊く、蒸す、煮込むなどあらゆる調理に仕える万能調理器具です。

TSMC 世界を動かすヒミツ
『TSMC 世界を動かすヒミツ』(CCCメディアハウス)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

もともと台湾企業の大同と日本の東芝が共同開発して誕生した製品です。ロングセラー製品でいまだに大きな収益をあげている。台湾企業は儲けることを重視するので、売れる限りは売り続ける。しかし、日本企業は1年間で2回もモデルチェンジして新製品を出して、古い製品を作らなくなる。

これは日本企業が研究開発を重視していることも示しています。ゆえに半導体分野でも製造装置や材料など長期の研究開発が必要な分野で日本はリードしているのです。しかし、研究開発はかなりコストがかかるのに、日本企業はその管理に無頓着なことが多い。逆に台湾企業は儲けることに強いので、多くの場合、長期の研究開発が必要な分野は日本ほど得意ではありません。

この台湾と日本の違いは相互に長所と短所を補えるので、両国が協力すれば成功しやすいと私は考えています。相互に協力して利益を得ていけば信頼関係を築いていけるはずです。

情ポヨ:まさにそれがTSMC熊本工場(JASM)の成功につながっている背景のひとつといえますね。

後編はこちらからご覧いただけます
劉 彦甫 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD