墓じまいの有力な移動先に納骨堂が台頭した事情 斬新な墓、20年前に拒否されなかった自動搬送式
エレベーターを降りて参拝スペースに進み、空きブースの手前にある端末にICカードをかざす。すると内部で搬送装置が作動し、バックヤードからICカードにひも付いた骨壺と銘板がブースに運ばれてきて、来訪者の目の前に「○○家」のお墓が出現する。存分に手を合わせたり故人と対話したりしたあと、終了ボタンを押せば骨壺と銘板はまたバックヤードに戻っていく──。
四半世紀前に登場した自動搬送式納骨堂
「自動搬送式納骨堂」が誕生したのは1990年代の終わりの頃だ。立体駐車場に近い仕組みを使うことで、ビルの内部に霊園を開くという斬新なアイデアが方々で話題となった。
利便性の高さが評価される一方で、発表された当時は「故人の遺骨をクルマと同じように扱うのはいかがなものか」「ずっと動かしていたら永遠の眠りにつけないのではないか」といった声が少なからず上がった。現在でも抵抗の声はゼロにはなっていないし、後述するように醜聞が報じられたりもしている。
ただ、それを踏まえても、この新興の「故人の住処」が一定の市民権を得ているのは確かだ。墓地情報ポータルの「いいお墓」を運営する鎌倉新書が実施した「お墓の消費者全国実態調査(2022年)」によると、2021年に同サイト経由で購入したお墓のうち、自動搬送式を中心とした納骨堂の割合は23.4%で、樹木葬(41.5%)と一般墓(25.8%)とともに主要な選択肢となっている。
自動搬送式納骨堂はなぜ世間に受け入れられたのだろう? 拒否反応はいつどうやって抑えられたのだろう? そこに何かしらの法則があるのなら、まだ見ぬ新しいサービスの普及に生かせるかもしれない。
そんな法則を探るために、自動搬送式納骨堂の開発と販売の草分けとして知られるニチリョクを訪ねた。
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