孤独死を弔い続ける神主が危ぶむ「強烈な孤立」 事故物件の「お祓い」に映る無縁社会の哀傷

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誰もが忌避する人の最後、日本社会の現実と向き合う男の葛藤とは(写真:kieferpix/iStock)
年間孤独死約3万人のニッポン──。そんな孤独死大国に押し寄せる無縁化の波と人知れず向き合い、葛藤している人がいる。それは、人の最終地点である「葬送」を生業とする人たちだ。彼らはこの社会にどんな思いを抱き、どう向き合っているのか。『家族遺棄社会 孤立、無縁、放置の果てに。』から一部抜粋・再編集してお届けする。

事故物件専門「お祓い」の神主が向き合う無縁社会

神奈川県相模原市──。津久井湖の近く、深き藍色の森の中に、真っ赤な鳥居が浮かんでくる。ここはいわゆる、日本随一の事故物件のお祓いを専門に扱う名物宮司がいる神社である。その名を金子雄貴という。金子がこれまでにお祓いしてきた事故物件の数は、ゆうに1000件を超え、自殺、殺人などがあったラブホテルやマンション、風俗店など多岐にわたる。金子は神主生活38年のベテラン宮司で、お祓いなど神事の依頼があればどんな場所でも「断らない」ことをポリシーとしている。

近年その数を増しているのが孤独死の物件だ。

金子に事故物件のお祓いを依頼するのは、その9割を物件の管理会社が占める。次の入居者に対して、お祓いをしたという安心感が欲しい。そのため、希望すれば「お祓い証明書」も発行している。部屋の中には長時間滞在できないほど、死臭が立ち込めている現場もある。金子のお祓いに立ち会う者はいない。気のいい不動産業者がたまに参列する程度だという。

うずたかく積もったゴミの山や人形の染みがベッタリと残る孤独死現場が、金子宮司のいつもの仕事場だ。とくに夏場は臭いがきつく、思わずその場で嘔吐することもある。

金子が事故物件のお祓いを始めたのは、2009年だ。どこの神社でもお祓いを断られた不動産会社から連絡があり、孤独死のお祓いを引き受けることとなる。そこは都内のワンルームマンションだった。初めての事故物件の洗礼は、強烈だった。

「3階のフロアのエレベーターの扉が開いた途端、とてつもない臭いが充満していた。生まれて初めての臭い。『なんだこれ!』と思った。警察が遺体を運び出した直後だった。体液で、敷かれた布団も床もビショビショだった」

祭壇や着物など、臭いがついてしまい、すべて捨てざるをえなかった。しかし、お祓いをすると、現場の空気感がハラリと変わるのがわかった。これは自分に課された使命だとすぐに感じた。

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