孤独死を弔い続ける神主が危ぶむ「強烈な孤立」 事故物件の「お祓い」に映る無縁社会の哀傷

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もちろん、会社に勤めている普通のサラリーマンが、高血圧や心筋梗塞やクモ膜下出血などの突然死で亡くなることもありうる。しかし、金子の訪れる現場では、お金がなくて病院に行けなかったり、周囲の人間関係から孤立していたりしたと感じるケースが多い。また、お金はあっても健康に関心がなくて、糖尿病で酒に溺れて死んでいく人もかなりの数に上るのだという。現場を訪れるたびに、焼酎とかチューハイの缶がゴロゴロしている床の状態に遭遇するからだ。

「たとえ不摂生な生き方をしていたとしても、そんな生活を止める人も誰もいない。そういう人は気が向いたときにしか仕事も行ってないし、生活保護だったり、そもそもまったく社会との接点がない。人間は1人で生きていくことはできない。だけど、今はコンビニもあるし、1人で生きていけると最後まで思っている。生活がおかしくなった時点で、本当はもうすべてが崩れていっている。だけど、そうなったときに、頼る人がいない」

本当は、人は1人では生きていけないんだよ──。金子はそうつぶやく。孤独は人をむしばむ。そして、自らの体をこれでもかと、痛めつける。 

親族だけでなく社会からも隔絶

金子の現場では、孤独死の場合、お祓いに親族が現れることは、ほぼ皆無だ。

本人が、親族だけでなく社会からも隔絶していたと感じる。本人に元妻や子どもはいるが、出てこないケースも。離婚などで親族と疎遠になり、友人関係からも隔絶して、最終的に孤独死してしまう。

「孤独死現場では親族はほとんど出てこない。死に至るまで、親戚縁者に嫌われたり疎遠だったりして、1人になっていった。借金や失業で、起死回生しようとしてギャンブルにハマったとか多い。元は妻も子どももいたけど、お父ちゃんと関わりたくないというところに堕ちていった。そういう本人が抱える個人的な理由と、無関心さが相まって複合的な要因から孤独死が起きていると思う。親族からも離れて、社会からも脱落して、その先が孤独死という結末になる」

次ページ「無縁社会の到来を肌身で感じる」
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