孤独死を弔い続ける神主が危ぶむ「強烈な孤立」 事故物件の「お祓い」に映る無縁社会の哀傷
金子は、事故物件について調べた。ほかの神社のホームページには、自殺物件のお祓いはお断りと書いているところもある。また、知り合いの不動産業者の話では、事故物件の依頼だと知ると、神主が「無理だ」と帰ってしまったケースもあったという。しかし、金子は『お祓い屋』である神社こそ、この現代社会が抱える問題に向き合わなくてはいけないという思いを強くした。
お祓いの9割は孤独死物件
それから『自殺、孤独死現場の供養、お祓い』というホームページを立ち上げた。すると、すぐに関東一円からお祓いの依頼が殺到するようになった。リーマン・ショックのときは、自殺の依頼が多かった。しかし、徐々にその数は孤独死が逆転していくようになる。そして、現在、事故物件のお祓いの依頼の9割が孤独死となっている。
「孤独死で、安らかに死んでいる人ってあんまり見たことがない。血を吐いたのか、壁にしぶきが上がって、ものすごく苦しんだ跡がある。助けを求めようにも、知り合いもいないし、ただ病気の痛み、苦しみに耐えて死ぬって、こんなに苦しいことはない死に方だと思う」
孤独死の多くが出口のほうを向いて、もがいた跡がある。誰かに助けを求めようとして行き倒れたのだ。
宮司といえども1人の人間だ。事故物件のお祓いを始めた頃は、夜中にうなされて大声を出し、体中汗びっしょりとなったこともあった。しかし、数々の事故物件を手掛け、故人の生きざまを知ることによって、次第に少なくなった。
そんな金子だが、近年の時代の流れの深刻さを感じるようになったのは、バブル崩壊後だという。
「高度経済成長があって核家族化した。それがさらに加速する形で、日本人は孤立していったんだと思う。昔は同じ町に住んでいるというだけで、疑似血縁集団的な町の風景があった。それがバブル崩壊ごろから薄れてきた。非正規雇用も増え、社会の組織に属さない、属せない人がいて孤立する。精神的、経済的にもね。
それが加速すると、本当に悲惨。そういう人のおうちは、足の踏み場がない。雑誌とか、食べかすとか、キッチンとかめちゃめちゃになってる。きれいなおうちで亡くなっていることなんてめったにない」
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