ネット葬儀の価格破壊で「下請け」業者は悲鳴 零細業者は「ただの『遺体処理業』か」と吐露

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棺上花束を載せた木棺
ネット仲介業者の「下請け」となっている葬儀業者。実際の葬儀にどのような影響が出ているのだろうか(写真:PIXTA)
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2000年代半ば以降、インターネットで定額の葬儀プランを売り出す仲介業者が続々と参入し、葬儀の価格破壊が起きている。そのあおりを受けているのが、既存の葬儀業者だ。

ネット業者が参入する前の葬儀は、喪主や家族が自分で葬儀業者を選ぶことは少なく、お寺や町内会、病院を通して紹介されるのが主流だった。葬儀の価格や内容は比較しようがない。ゆえに明細を提示しない業者もいるほど、どんぶり勘定がまかり通っていた。

「20年前はひどかった。依頼者の家柄を見て、『あの家だったら300万円でも払う』『会社の取締役の家だぞ、もっと取れるはずだ』なんて言葉が飛び交っていた」と神奈川県の葬儀業者は当時を振り返る。

ネット業者の登場で低価格化が進んだ

不透明な葬儀価格は、消費者の不信感を招いた。そこに登場したのがネットの価格比較サイトや、料金が明瞭な定額プランを売りにするネット仲介の業者だ。価格が見える化され、葬儀の低価格化が進んだ。

小規模な葬儀の需要の高まりもあり、ネット業者は「一日葬」「家族葬」という簡略化した葬儀プランを作り出した。既存の葬儀業者もネットの相場を念頭に置いた価格設定を迫られていった。

定額で安い葬儀プランは、消費者にとってメリットが大きい。だが、ネット業者間の価格競争が激化し、低価格化はさらに加速していく。ネット業者が参入し始めた当初、最も簡素な火葬式(直葬)であっても20万円ほどだったが、今では最安で8万円を切るプランも登場している。

そもそもネット業者は、自社が葬儀を行うわけではない。提携する葬儀業者に施行を委託し、葬儀業者から仲介手数料を得るというビジネスモデルだ。その手数料は葬儀費用の約3割といわれる。

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