1.5億円税務事件の背景にある「寺院存亡危機」 過疎地で7寺を兼務していた地方寺住職の悲哀

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少子高齢化や過疎化、葬儀の簡素化で宗教の出る幕がなくなりつつある。(デザイン:小林由依、藤本麻衣、松田理恵)
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和歌山県の南紀白浜空港から車で山あいを走ること2時間半。現れた集落の中心部にその寺はあった。

今年1月、仏教界ではある事件が耳目を引いた。和歌山県内にある臨済宗妙心寺派の2寺院の住職が巨額の所得隠しをしていたとマスコミが報じたのだ。

新聞記事にはこうある。

「お布施1.5億円『隠し給与』和歌山・2宗教法人 生活費、貯蓄に」(毎日新聞1月31日付)

「お布施など1.5億円、住職2人が流用か 国税局、所得隠し指摘」(朝日新聞同)

国税局が目をつけた兼務寺のお布施の行き先

記事によると、2つの寺院は大阪国税局の税務調査を受け、2021年までの7年間で1.5億円の所得隠しを指摘されたという。国税局が目をつけたのは、兼務寺のお布施の行き先だ。

「1.5億円」という数字が躍った新聞記事

兼務寺とは普段は住職のいない無住寺で、法要などは同じ宗派の近隣の住職が行う寺のこと。住職は兼務住職と呼ばれる。

摘発された2寺の住職は自寺(本寺)のほかに、それぞれ7つと5つの寺を兼務していた。兼務寺のお布施を自寺の口座ではなく自身の個人口座に入れていたという。国税局は、住職が兼務寺のお布施を法人ではなく個人の口座に入れていたことを「仮装・隠蔽行為」と判断。重加算税を含めて計約7800万円を追徴課税した。2法人はすでに全額納付している。

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