2016年にAIラボを設立して以降、AIかいわいで徐々に頭角を現してきたサイバー。人材確保や大学との共同研究を加速させた舞台裏を追った。
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スクランブル交差点の喧騒とは打って変わり、閑静なオフィスフロアが広がる大型複合施設・渋谷スクランブルスクエア。国内最大のネット広告代理店、サイバーエージェントはこの高層ビルに拠点を構える。
オフィススペースに足を踏み入れると、広大なスペースにずらりと並んだPCとデスクが目に飛び込んでくる。大手IT企業でよく見かける風景の中に、ほんの数列だけ“異色の島”が存在する。
はたから見れば、周囲と何ら変わらないデスクだ。しかしそこに座るのは、サイバーエージェントと聞いて多くの人がイメージする広告運用や営業の社員たちではない。国内外の名門大学を経て、機械学習や計量経済学、コンピュータービジョン、自然言語処理などを究める「AI研究者」たちなのだ――。
AI研究企業の中では浮いた存在だが…
AI研究の領域で今、サイバーエージェントの存在感が高まっている。
研究開発組織「AI Lab(AIラボ)」を設立したのは2016年。当初10人に満たなかった研究者数は今や88人(2024年4月時点)まで拡大し、AIの国際会議でも数多くの論文が採択されている。ディープテックのベンチャーキャピタル、Thundermark Capitalが発表した「AI Research Ranking 2022」では、世界49位、日本4位のAI研究企業に位置づけられた。
なぜここまで急速に研究力をつけることができたのか。
大学との共同研究や研究者の採用を加速させるには、“かいわい”と化するAI研究のコミュニティーに溶け込むことがカギを握る。前出のランキングをみると、サイバーより上位につけるNTTやNEC、富士通、さらに下位の富士フイルムや三菱電機、オムロン、ソニーまで、名を連ねる顔ぶれは通信・電機系の伝統的な企業やその研究機関ばかりだ。
そしてその人材獲得競争は、日本トップのAI研究企業とされるNTTの幹部ですら、「採用はすごく大変」と漏らすほどの過熱ぶりである。
浮いた存在とも言えるサイバーエージェントは、ラボの立ち上げ期から、さぞ苦労したのだろう――。そんな記者の思い込みを、「苦労話を聞きたいとよく言われるのだが、案外『トントン』と来てしまった」と一蹴するのが、AIラボを育ててきたサイバーエージェントの内藤貴仁常務だ。
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