ウマ娘のヒットがもたらした利益インパクトは、藤田社長にとっても衝撃的だった。その成功体験を再現すべく、一大プロジェクトが動き出した。
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年が明けてから間もない2月ごろ、都内の某ホテル。サイバーエージェントの役員定例合宿が開かれ、藤田晋社長は幹部たちを前にこう告げた。
「経営のアジェンダとして、オリジナルIP(知的財産)に力を入れよう」
この日を境にサイバーエージェント社内では、自社で原作から創出するエンタメコンテンツ「オリジナルIP」の強化に向けたプロジェクトの構想が一気に具体化し始めた。
実働を担う特命部隊が、早ければ5月中にも発足する。舵取りを託されたのは、同社で以前からエンタメ・IPビジネスを担当し、次期社長候補の筆頭格とも名高い山内隆裕専務だ。藤田社長も密接に連携するという。
エンタメに関心を持つ社員などを全社からピックアップし、山内専務が声をかけて回っている。メンバーは多くても20~30人程度に絞る予定だ。実務として、漫画やアニメ、ゲームなどあらゆるジャンルの作家・スタジオの発掘や、クリエーターとのコミュニケーション、テクノロジーによる制作・マーケティング支援などを想定している。
すでに山内専務は複数の作家やスタジオと接触済みで、「ヒット作品の本数は限られているし、それなりの原資と時間が必要となる。藤田が経営のアジェンダに組み込んだことで、すごく取り組みやすくなった。オリジナルから逃げずにトライする」と意気込む。
現場任せだったアニメ部門に変化
実は昨年から、サイバーエージェントはIP周辺の領域で活発な動きを見せてきた。
2023年6月、舞台制作を手がけるネルケプランニングを買収。『テニスの王子様』などの2次元コンテンツを原作とした「2.5次元舞台」の有力制作会社として知られ、大手アニメ会社の幹部が「あのネルケをサイバーが買うとは……」と漏らすほど業界を驚かせた。
2023年10月には、アニメ・ゲームの制作プロセスに生成AIの導入を図る部門と、IPホルダーと組んだフェスなどのリアルイベントを手がける部門を矢継ぎ早に設立。同社のエンタメビジネス関係者の間では、「現場が好きにやってきたアニメ部門と幹部とのやりとりが増えるなど、経営層からの関心が高まっている」との声も上がるようになっていた。
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