「私が辞めるという話をした時、社長は親身に相談に乗ってくれ、『本当にその会社に入るのがベストなのか?』を一緒に考えたり、最終的には『自分で決めたその選択を正解にしてこい』と、送り出してくれました。
私の頑固さを知ってくれていて、納得したいタイプだってことをわかってくれていたんですよね。でも、インターン出身の新卒が1年経たずに退職するということは、社内的には決してポジティブなこととして映らないだろうと、私自身もその重さは理解していました。だから、当時は退職を決めた時も、退職後も、罪悪感のほうが強かったんです」
一度破ってしまった門をもう一度くぐるような感覚
それでも、出戻りに挑戦することを決めた。
「定期的に会っていた先輩に、戻りたいということを伝えました。その先輩は私の当時の退職経緯や心情をよく理解してくれており『まずは社長と対面でしっかり話せたほうがいいよね』と言って、社長と話す場を作ってくれました。
キュービックを辞めた時の自分の心境、その後、経験したこと、自分の気持ちの変化など、すべてお伝えしました。そして、ビジネスを通じて社会に向き合っていきたい、ということも。だからキュービックに戻りたいんです、と。
その結果、『いろいろ経験したね』『また一緒に頑張ろう』と言ってもらえて、握手を交わしました。私としては、一度破ってしまった門をもう一度くぐるような感覚でした。だから、握手した時は、自分の修行期間を認めてもらえたような感覚でした。私が体育会系なので、そう感じていただけで、後から社長には『何その感覚』と笑われたんですけどね(笑)」
そして、ずっと大切にしてきたクラシックバレエや伝統芸能との関わり方も、自分なりの答えが見えてきた。必ずしも自分自身の生業にする必要はなく、関わり方を変えるということだった。
「自分自身が習い続けたり、踊り続けたりして”伝統舞踊を継承していくこと”、それが私のアイデンティティだと気づきました。
日本には、クラシックバレエだけじゃなくて、日本舞踊、琉球舞踊、たくさんの舞踊があるんです。もちろんグローバル展開を視野に入れていくことも大切だけど、国内でその根を絶やさないために、小さくてもできることがある。ずっとコンプレックスに感じていた『自分が何者なのか』という問いに答えが出た気がしました。以前の私は、アイデンティティと仕事を結びつけることや職種にとらわれすぎていたんです」
そして、今、彼女は同社で働いている。取材の最後、彼女は自身のキャリア観についてこう語った。
「会社の存在意義ってなんだろう、と、考え続けてきました。一人でできることって限界があって、何かをなしえるために組織ってあるんだなって気づいたんです。世の中をよくしていきたい、その手段の一つとして、私は、キュービックを100年続く企業にしていきたいです」
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