新卒入社も「10カ月」で退社、28歳彼女が戻った訳 元バレエダンサーの人事、転職で気付いたこと

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「Web広告運用を行う事業部に配属されたのですが、私の担当案件はまさかの赤字で、撤退ラインぎりぎりの状況だったんです。こうした環境のプレッシャーの中、日々がむしゃらに働いていました」

ただ、バレエや大学では得られない、ビジネスの現場ゆえの学びも多かった。

「当時の上司の、今でも印象に残っている教えが『課題や事象に対して、”なぜ”を5回考えてから相談する』ということ。バレエの世界に長くいたこともあり、それまでの私は感覚で動くことが多かったんです。でも、ビジネスでは俯瞰して冷静に状況を把握する・分解して物事を考える・筋道を立てて相談することが大事になる。当時の私には、それがすごく衝撃的で……。

同じような考え方でバレエに向き合っていたらなって思いました。もっと、筋肉や骨の仕組みを理解したり、身体の使い方が変わっていたでしょう」

「同じような考え方でバレエに向き合っていたらな…」と振り返る阿南さん(写真:谷川真紀子)

バレエ団で奮闘するかつての仲間たちの一方で、インターンに奮闘した阿南さん。

「私にとっては、ビジネスの場にいることすらコンプレックスで。だから、キュービックでのインターンが私にとっては背水の陣というか。今思えば、考えすぎかもしれませんが、当時は必死でした」

1年足らずで退職を決意

その後、インターン生を対象とした社内賞を受賞するなど活躍、組織開発を担う社長直下のコーポレートデザイン室の立ち上げに参画。2018年に新卒でキュービックに人事として入社。能力開発の仕事に従事することになる。

しかし、翌年2月。新卒入社から1年経たずして、キュービックを退職することになった。

「学生時代にインターンをしていた時って、周りに長期インターンしている人がほぼいない状況でした。だから、それだけで自分は周囲と差別化できているような気がしていたんです。でも、いざ就職してみると、働いていることがアイデンティティにはなりません。

また、自分の業務内容にも自信が持てなくなっていきました。『そもそも会社はなぜ長期インターンを続けようとしているんだろう。会社が大きくなって、社会的責任も大きくなっているこの状況なのに、なぜ、正社員ではなくて、インターン生なんだろう……』。

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