ボランティアで教室へ
「ボランティアのタマキ」になる――。
それが、Minamiこども教室に通い始めた私にとって、当面の目標だった。
毎週火曜の夕方になると、「取材に出ます」と称して会社から行方をくらませ、島之内へ向かう。そして子どもの隣に座って、勉強をみる。
「新聞記者の男」ではなく「ボランティアのタマキ」として、子どもや他のスタッフに認識してもらえるよう、ただ教室に通った。そこから教室との関係を築くことが、それまでの自転車操業のような記者活動に対する、自分なりのアンチテーゼだった。
子どもとのコミュニケーションの熟練度については、そこらの会社員には負けない自信があった。私はプロテスタントのクリスチャンなのだが、大学生だった4年間、教会の日曜学校で小学生担当のスタッフをした経験がある。毎週日曜の朝、教会に集まってくる小学生と一緒に遊び、夏にはキャンプへも行った。
そのころ体得した「子どもの心をつかむコツ」は、姿勢も意識も子どもと同じ目線になろうとすること。Minamiこども教室でも先生ぶらずに、子どもの相談には心の底から応じ、おふざけには全身全霊でリアクションした。大人目線であしらうことを、自らに禁じた。
そのうちに、子どもからは「先生」ではなく「タロー」と呼ばれるようになる。なめられつつも、親しみをもってもらい、徐々にボランティアとして定着していった。
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