「普通」の時間になれば
メイはその後しばらくウカイさん宅に泊めてもらい、自宅へ戻った6月末、晩ご飯を食べに再び我が家へ来た。その日は親友のマナミも一緒だった。マナミも緊張していたそうだが、メイとは逆にいつにも増して口数が多く、にぎやかな食卓となった。
それからメイは週1回のペースで、うちへ晩ご飯を食べに来るようになった。食卓での話題は尽きなかった。
「部活動の試合で勝てた」「テストの結果やばかった」「同級生の女子と微妙」「隣のクラスのあの男子が気になる」と、高校生らしいおしゃべりを聞かせてくれた。
メイの誕生日にはマナミも一緒にケーキでお祝いし、クリスマスには心斎橋のイタリアンへ少しおめかしして出かけた。年末には2人がうちへ泊まりに来て、一緒に年越しを過ごした。
私が仕事で帰れない日でも、メイは妻と2人で楽しくやっていた。妻とはSNSの連絡先を交換し、私相手の時よりも気軽に連絡を取り合っていて、ちょっとうらやましかった。一度、メイから「ピアスが外せなくなった」と妻にメールがあり、夜にメイの家へピアスを外しにいったことさえあった。
そうして一緒に食卓を囲みながら私が考えていたのは、この時間がメイにとっての「普通」の時間になればいいな、ということだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら