孤高の天才棋士「豊島九段」を育てた"2人の師匠" 幼き頃の知られざる師匠とのエピソードを公開
豊島将之、当時5歳
1995年6月頃、関西将棋会館の道場に小さな男の子が母親に連れられてきた。手合係をしていた土井春左右に母親は「息子はまだ人が将棋を指しているのを観たことがないんです。見学させていただけますか?」と言った。男の子は5歳になったばかりだという。
土井は長く関西本部で働いてきた。時々、小さい子が親に連れられて道場にくる。上級者・有段者が指している光景は、初めての人には近寄りがたいものだ。「どうぞ入ってください」と優しく招き入れた。
その日はお客が多く、土井は手合に追われて母子を気にかけることはなかった。1時間ほどたった頃、ふと思い出してバイトの青年に「あの子はもう帰ったかい?」と聞いた。5歳くらいの男の子は5分か10分も観たら飽きてしまう。当然もう帰っているだろう。すると青年は言った。
「いえ、まだ観てますよ」


















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