藤井聡太に挑戦「豊島九段」が人との練習やめた訳 "孤高の努力家"が「棋聖」獲得までに行ったこと

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豊島九段
小学3年生のときに史上最年少で棋士養成機関に入会し、平成生まれで初のプロ棋士に、そして令和初の名人となった豊島将之九段(筆者撮影)
現在、藤井聡太名人に挑戦している豊島将之九段。2019年に令和初の名人となった実力者です。先に行われた第1局、第2局では残念ながら黒星となりましたが、当代最強の名人を窮地に追い詰めたと話題になりました。5月8日、9日に行われる第3局での熱戦も期待されています。
「AIより強い」と称される藤井名人。AI研究をして強さを磨いていった次世代の棋士として知られていますが、豊島九段もAIで将棋を追究してきた棋士の一人です。“人”との練習を断ち、AI研究に勤しんだといいます。その孤独な戦いの日々と知られざるエピソードを、『絆―棋士たち 師弟の物語―』より一部抜粋・編集のうえ、お届けします。

「人」との練習を一切やめた

関西将棋会館の棋士室には、いつも若手棋士や奨励会員が集まってくる。山崎隆之、糸谷哲郎、稲葉陽など関西を牽引する若手が盤を挟んで互いを磨き合う。ある時期、ふと誰かが言った。

「豊島さん、本当に見なくなったね」

稲葉陽(現八段)は、豊島と何年もVS(一対一の練習)や研究会を行ってきた。2015年に自身が第4回電王戦出場を決めた際に、対策としてしばらくソフトを使った研究に集中しようと思った。

そのことを豊島に伝えると「そうなんだ。自分もちょうど研究会をやめようと思っていたんだ」と言われる。稲葉としては電王戦が終わるまでのつもりだった。そのときは豊島が何年にもわたって、研究会やVSを休止することになるとは思わなかった。

次ページコンピュータに勝ったのは豊島だけだった
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