「ひとり言」は脳の衰えを防ぐ簡単にできる対策だ 長期記憶と「言葉に出す」ことの深い関係とは

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一方、長期記憶というのはワーキングメモリから「記憶系」脳番地、とくに海馬によって情報が蓄えられたものをいいます。

短期記憶が、数字や意味のない言葉の羅列のようなものが多いのに対して、長期記憶は体験に基づいたエピソード記憶などが中心です。逆に言えば、脳は意味を持たない記号より、意味を持つエピソード記憶を重視しているのです。

記憶とひとり言の深い関係

実際、私たちが過去を振り返り、現在の人生、あるいは未来に役立つ情報は何かというと、歴史の教科書に書いてあった年号ではなくて、過去に体験したさまざまな体験やエピソードでしょう。

だからこそ、過去の体験を通じたエピソード記憶が、海馬の長期記憶の中枢に収められるわけです。

脳にしてみると、声帯や顔の筋肉を動かして発せられた言葉=ひとり言は、発せられたという事実で、エピソードと同じ意味と重みを持ちます。

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それゆえに、何かを覚えるときは体を動かし、声を発声して覚えます。それによって、エピソード記憶に近いものとして、長期記憶に残すことができるのです。

また、たくわえられた長期記憶を呼び覚ますときにも、ひとり言が大きな力を発揮します。探し物をするときに、無言で探すより、「ノートはどこに行ったのかなぁ」とひとり言をつぶやきながら探してみてください。

すると、ノートという言葉をキーワードにして、さまざまな連想が浮かび、それが長期記憶を刺激して、ノートのありかがフッと思い出されるわけです。

記憶力をアップさせるには「言葉」──それも「ひとり言」がとても大きな力を持っているということです。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるもっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など多数。

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