「ひとり言」は脳の衰えを防ぐ簡単にできる対策だ 長期記憶と「言葉に出す」ことの深い関係とは

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問題提起や検証することは、左脳的な作業になります。具体的に実験を繰り返しながら、fNIRSの有用性を検証していきました。

私はfMRIを学ぶためにアメリカのミネソタ大学に渡り、その道のパイオニアである恩師らに学んだわけですが、学ぶ機会を与えてもらった恩に報いるためにも、発見したfNIRSの完成度を上げなくてはならないと考え、試行錯誤していました。

そんなとき、「押してダメなら、引いてみな」という言葉が脳裡に浮かび、自分のfNIRSの技術そのものを疑って、検証し始めました。

ひとり言ノートをつけてみる

話は逸れますが、私はいつしか「ひとり言ノート」を作り、そのときにひらめいた言葉などを書きつけるようになりました。あえてひとり言を生み出すために、ノートを持参してカフェに行くこともありました。

ミネソタ大学と自宅の途中にあるダン・ブロス・コーヒーに行くと、ひとり言が出やすいので頻繁に通いました。以来、旅をしたり、街を歩くときは、ひとり言が出やすい“ひらめきカフェ”を探す癖がつきました。

そして2022年、fNIRSの発見から31年目に、脳機能を定量する技術を完成させて、国際特許と論文にまとめ、発表しました。fMRIはもちろん、従来のfNIRSでもできなかった、脳機能を頭皮上から定量的に評価できる技術を確立したのです。

私は、自分のひとり言を信じたおかげで、30年以上も一途に研究を続けることができました。生物学的にはとっくに老化しているはずなのに、私の脳が生み出すひとり言は老いるどころか、年々威力を増しています。ひとり言の威力たるや、恐るべしではないでしょうか。

いずれにしても、右脳のひとり言に対して、左脳で言い返してみてください。

「それって本当かな?」、「どこかに間違いや問題はないだろうか?」、「例外事例はないだろうか?」。自分の頭の中で、右脳と左脳の真剣なセッションが繰り返されるわけです。

この過程に、外側の世界にあふれている雑多な情報はほとんど関係ありません。というか、むしろそれらは邪魔なノイズのようなものです。

ところが得てして、私たちは外から入力しないと、不安になりがちです。ですが、信じるべきは自分の脳なのです。

自分の左右の脳を信じ、内側で激しく対話を繰り返す──。新しいものや真理というものは、そうやってたどり着けると考えます。

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