政府が「物流2024年問題」をこんなにも"煽る"事情 トラックドライバーの残業規制だけではない

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だが実は、2030年の34.1%(9.4億トン)の輸送リソース不足のうち、2024年問題に起因する輸送リソース不足は、約半分(14.6%、4億トン相当)である。残りは、現状にあぐらをかき、トラックドライバーの人手不足対策などの運送ビジネスの歪みを放置した場合における、自然な推移によって生じる影響なのだ。

つまり、「モノが運べない(運んでもらえない)」物流危機は、遅かれ早かれ日本社会を直撃することになる。だからこそ、手遅れになる前にきちんと運送ビジネスの歪みを是正しなければならない。

具体的にはどんなことをすべきか

こうした中、岸田政権は、2023年3月31日に、「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」を立ち上げ、同年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」、同年10月に「物流革新緊急パッケージ」を発表した。今年1月から始まった通常国会では、「物流革新」政策に基づく施策の法制化を進めている。

「物流革新に向けた政策パッケージ」では具体的な施策として24項目、「物流革新緊急パッケージ」では13項目を挙げている。

中でも、政府がもっとも期待しているのが、「積載効率の向上」である。現在の積載効率は約38%。すなわちこれは、「トラックの1/3は空気を運んでいる」状態だが、政府は2030年度までに、積載効率を16%以上向上させることを目指している。

次に大きな効果を見込んでいるのが、「荷待ち・荷役の削減」。荷待ちは、荷物の積み卸しのために待機する時間、荷役は荷物の積み卸し作業のための時間を指す。現在、1日の運行で平均3時間程度発生している「荷待ち・荷役時間」を2時間以内に制限する「2時間以内ルール」を制定し、2時間を超えた場合には、待機料金・荷役料金の割増率を5割とする対策を盛り込んだ。

こうした複数の取り組みによって下表の通り輸送ポイントを14.3ポイント(=トラックドライバー14.3万人相当)を改善できるとしている(すなわち、今年度における2024年問題は回避は可能になる)。

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