運送業界の歪みは、1990年に実施された規制緩和によって、1996年には4.9万社弱だった運送会社が、わずか4年で6万社強まで増えてしまったことから始まった。
運ぶべき荷物が増えたわけではない。にもかかわらず、短期間で運送会社が約1.5倍に増えた結果、運送業界には過当競争が発生し、運送会社と荷主のパワーバランスが大きく崩れてしまった。運送会社は仕事欲しさに、荷主の過剰要求をのまざるを得ない状況へと陥ったのだ。
荷主は、この「荷主優位」の状況を利用し、主に2つの怠慢を行った。
• 運送プロセスのムリやムダを見直すような本質的な改善を行わず、運賃の買い叩きを行うことで、運送コスト削減を行った。
• 荷物を受け取る側の着荷主のワガママ(時間指定や自主荷役など)をそのまま運送会社(=トラックドライバー)に押し付けることで、顧客満足度の向上を図った。
その結果、トラックドライバーの労働時間は長時間化し、逆に運送ビジネスの利益率は悪化した。当然、トラックドライバーの収入も減り、「労働時間が2割長いのに、収入は2割低い」状態に陥ったのだ。これではトラックドライバーの成り手が減るのも仕方ない。
それでなくとも、日本は少子高齢化の進行に伴う労働力人口の減少という構造的な社会課題を抱えている。
2020年の就労可能人口(15~64歳人口)は7509万人だったが、2032年には7000万人、2043年には6000万人、2062年には5000万人を割り、2070年には4535万人まで減少すると予測されている。
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