「敵に塩」は若者には難しい?"伝わらない"日本語 「新聞にもよく使われる」史実・故事由来の表現

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例を5つ挙げてみますので、説明を読みながら確認してみてください。

●「板に付く」……板とは舞台のこと。役者が経験を積んで、その芸が舞台にぴったり調和する意から転じて、職業や任務、地位、服装、態度などがその人にしっくり合うこと

●「反りが合わない」……人と気心が合わないこと。刀の反りと、それをしまう鞘(さや)が合わない意から

●「うだつが上がらない」……出世ができない。いつまでも身分が低いままでパッとしない。「うだつ」とは、家の建築で梁(はり)の上に立てる短い柱。屋根の重みを受け、上から押さえつけられているように見える。それにたとえて

●「タガがゆるむ」……タガは竹や金属で作る輪。桶や樽などの外側にはめ、きつく締めあげて、堅く丈夫に仕上げるためのもの。それがゆるむとは、すなわち、緊張がゆるんだり、気力や思考力などが衰える、などの意

●「お膳立てが揃う」……始めようとしていることの準備がすべてできた。すっかり支度が整った。そのような場合に使う言葉。食膳に料理が全部並べられたという意から

語彙を増やせば人生も豊かになる

現代における世代間のコミュニケーション・ギャップは、読書も含め活字のシャワーを浴び続けてきた上の年代と、スマホ画面と首っ引きの若いデジタル世代の間に横たわる深い言語の溝に問題があることは、確かです。

しかしながら、歴史や文化に由来する言葉については、まったく別だと言えましょう。

なぜなら、いまを生きる老いも若きも皆、同じような過去に連なっている人間です。

昔の人が残した戒めや、故事が伝える教訓などは、現代人にとっての財産でもあります。

それゆえ、若いから昔のことには関心ないとか、興味ないとか、そんなことを言うべきではないと思うのです。

日本人が代々寄り添ってきた格言などを、若い方は、もっと若い方に、順々に伝えていく……そうした使命のようなものがあるのではないでしょうか。

せめて過去の人に学ぶ貴重な言葉の習得だけでも、ふだんからできるだけ努めてほしいと願うばかりです。

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