電力会社8社と東京ガスを格下げ、格下げ方向での見直しを継続《ムーディーズの業界分析》

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


コーポレート・ファイナンス・グループ
主任格付けアナリスト/VPシニアアナリスト
岡本 賢治

ムーディーズは7月1日、電力会社8社と東京ガスの長期格付けを格下げし、格下げ方向での見直しを継続することを公表した。本邦法令上の格付け付与日は7月1日である。1ノッチの格下げの対象となる発行体は、沖縄電力(Aa2からAa3)、電源開発(J-POWER、Aa2からAa3)、東京ガス(Aa1からAa2)である。また、2ノッチの格下げの対象となる発行体は、中部電力(Aa2からA1)、中国電力(Aa2からA1)、北海道電力(Aa2からA1)、北陸電力(Aa2からA1)、関西電力(Aa2からA1)、九州電力(Aa2からA1)である。大阪ガス(Aa2)の格付けには変更はなく、格下げ方向での見直しを継続する。

格付け理由

今回の格付けアクションは、3月11日の地震による福島第一原子力発電所(福島第一)の事故以後、電力・ガス業界の規制の枠組みに対する日本政府の支援が、ムーディーズが従前想定していたほど強くはなくなったとの考えを反映するものである。規制環境は、以前よりも不確実な要素が増加しており、予測可能性が低下しているとムーディーズは見ている。

原子力発電所を持つ電力会社に対する2ノッチの格下げは、上記の要因に加えて、福島第一での事故後、LNGやその他化石燃料による電力代替によって燃料費が急増することなど、これらの電力会社にとって、さらに事業リスクが増大していることを考慮したものである。同時に、経済的、財務的、あるいは政治的な環境によっては、増加したコストを確実に回収していくことが困難になる可能性があることも反映している。

福島第一での事故は、日本における原子力発電の役割の抜本的な見直しにつながってきており、原子力発電所の安全性に対する懸念から、福島第一以外の原子力発電所においても、停止期間が長期化するリスクが出てきている。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事