次に、昨年ディズニープラスで配信された『季節のない街』。これこそが「シン・宮藤官九郎」の象徴であり、ある意味で現時点での彼の最高傑作と言えるだろう。
黒澤明映画『どですかでん』(1970年)の原作となった山本周五郎の小説を宮藤官九郎がアレンジ。(明らかに東日本大震災後を思わせる)「仮設住宅」を舞台に、めっぽう個性的な弱者たちがワチャワチャする物語。ディズニープラス『季節のない街』公式サイトで宮藤本人はこう語る。
――どうしよう。今回は自信がある。紛れもなく、いちばんやりたかった作品で、これを世に出したら、自分の第二章が始まるような気がしています。
「平成世代」(30代)の物語
では、賑やかな『不適切にもほどがある!』のどこに弱者視点があるのか。ここでは、今どきの会社における「働き方改革」をテーマとした第1話・第2話に注目する。私はこの2回をそれぞれ秋津真彦(磯村勇斗)、犬島渚(仲里依紗)の物語として見た。
秋津真彦はアプリ開発会社の社員で入社7年目。まったく悪気はないにもかかわらず、部下の女性からハラスメントで訴えられる。犬島渚は、1歳6カ月の息子がいるシングルマザーで、テレビ局のバラエティー番組を担当アシスタントプロデューサー。仕事中も育児に追われながら、使えない若手社員に手を焼く。
いくぶん乱暴と思いつつ世代論でくくると、これは「昭和世代」と「Z世代」の中間で板挟みになっている、ある意味でもっとも根深い問題を抱えた弱者=「平成世代」(30代)の物語だ。
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