食べログ逆転勝訴の決め手「別ロジック」の波紋 独禁法の「精鋭弁護士」は戦い方をどう変えた?

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1審で争われたのはチェーン店の評点を下げるアルゴリズム変更、「チェーン店ディスカウント」そのものの違法性だった。原告、被告、裁判官の議論がここに集中した結果、地裁は「チェーン店にとってあらかじめ計算できない不利益」が発生したと判断した。

一転、2審では食べログ側が「チェーン店ディスカウントではない」(イム氏)という「別ロジック」の存在を強調したという。現在、食べログ側の請求に応じて閲覧制限をかける箇所を裁判所が審理中のため、判決文が公開されていないが、取材を通じてこのロジックの概要がわかった。

その主な内容は、サクラ行為対策のための「レビュアー」の影響度調整だという。食べログの評点は、その店舗を訪れた人の口コミから算出されるが、1人ひとりの評点への「影響度」は均一ではなく、レビュアーの過去の投稿回数や内容によって決定される。

飲食店はほとんどの店が集中する3.0点台前半から、評点3.5以上や4以上などの「高いレンジ(範囲)」に上がるためには、多くのレビュアーから高得点を得ることはもちろんだが、一定数以上の「食通」(影響度がとくに高いレビュアー)からも高評価をもらうことが必須だ。

ところが数年前に一部の「有名レビュアー」が飲食店側から接待を受ける見返りに、その飲食店に高評価をつけていたことが明らかになり、社会的な批判を浴びた。現在も一定数、不正を働くレビュアーはいるという。

疑惑のレビュアーは影響度を引き下げる

そこで食べログは、不正行為を働いていると強く疑われるレビュアーを独自の基準であぶり出し、定期的に影響度を引き下げている。すると、そのレビュアーが過去に投稿した、不正行為に関係ない口コミを含むすべての影響度が小さくなる。

前述したように飲食店が高いレンジの評点であるためには、食通とされるレビュアーからの高評価が必要条件だ。そのため影響度調整によって有力レビュアーが食通と認定されなくなった場合、彼らが高評価していた飲食店の評点が大きく下がる、ということが起こりうる。

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