「退避経路は断絶?」台湾有事シナリオの盲点 通信が途絶え、現地での機微情報の接収リスクも

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昨年7月、「日本戦略研究フォーラム(JFSS)」に、国会議員や元自衛官、アメリカ、台湾から有識者らが参加し、台湾有事を想定したシミュレーションを開催した。

想定されたシナリオでは、中国によるサイバー攻撃が台湾、日本を標的に行われ、官公庁のサーバーがダウン、鉄道や航空のサイトが使用できなくなるほか、沖縄電力や九州電力などのインフラにも被害が及ぶ。さらには先島諸島周辺で海底ケーブルが切断され通信に障害が起きるなど、インフラが機能不全を起こし、社会に大きな混乱をきたすといったものだ。

また、軍事侵攻による統一だけではなく、軍事的圧力により台湾を屈服させたり、台湾を中国国内と同様に見なす法の制定に端を発した“強制的”な平和統一を目指すシナリオも想定されるため、企業としては平和統一のシナリオについての検討も求められる。

なお、現実には不測の事態も起こりうるため、シナリオ分析において、専門家に対しても正確な予測を求めることはできない。そのことを念頭においたうえで、提示されたシナリオの中から、シミュレーションを実施すべきであるのは言うまでもない。

このようなシナリオ分析に対し、多くの企業担当者は沈痛な面持ちで「想定できていない事項があまりにも多い」という反応を示す。

シナリオ分析から見える対応の難しさ

仮に武力衝突を伴うシナリオを想定した場合、サイバー攻撃、通信の遮断、移動手段の麻痺など有事のフェーズに応じ多くの事象が想定される。企業としては、現地駐在社員の退避、海上封鎖に伴う供給網の寸断、対中金融制裁による決済の滞り、現地での施設接収など多くのリスクが想定される。

まず検討されるのは“ヒト”の安全だろう。

中国や台湾の現地駐在員をどのタイミングで退避させるべきだろうか。有事に突入し、通信が途絶えた状態で、はたして日本本社から指示が出せるだろうか。

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