「台湾有事は日本有事」が当たり前である理由 「日本は巻き込まれなくてすむ」は非現実的

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「台湾リスク」特集バナー
軍事衝突への危機感が高まる中国と台湾。デザイン/小林由依、杉山未記、藤本麻衣、中村方香
「台湾有事は日本有事」という言葉が一般的になった背景は何か。台湾有事の見方を含めて、台湾政治や中台関係に詳しい東京大学の松田康博教授に解説してもらった。
『週刊東洋経済』7月31日発売号では「台湾リスク」を特集。緊張が高まる台湾海峡の情勢や半導体強国の背景、2024年総統選挙など台湾の政治経済を徹底解説している。

日本が何もしなくても巻きこまれる

――日本では有事に巻き込まれたくないという考えから、「台湾有事は日本有事」という言葉への反発もあります。なぜ「台湾有事は日本有事」といえるのでしょうか。

週刊東洋経済 2023年8/5号(台湾リスク)[雑誌]
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もともと専門家の間では「台湾有事は日本有事」は常識だったが、安倍晋三元首相が言及したことで、一般に知られるようになった。

なぜ「台湾有事は日本有事」なのかと言えば、中国軍が台湾に侵攻すれば日本が何もしなくても巻き込まれるからだ。まず台湾有事は台湾海峡だけの局所的紛争にとどまらず、地域的な大戦争になる。

中国軍が台湾を攻撃する際には台湾海峡を渡るイメージが想像されがちだが、実際の配備をみると、もっと範囲は広く、かつ大規模なものになる。まず福建省や江西省などからはミサイルを台湾に撃ち込み、航空機による爆撃を行う。

その後、上陸部隊が動く。台湾北部向けには上海から、台湾南部向けには海南島から行く。台湾は当然それに反撃するのだから、東シナ海と南シナ海も戦場になる。加えて中国は東側からも台湾を攻撃する予定なので、西太平洋地域も戦場になる。海上での戦闘では浮遊機雷も使われるが、それらが海流の影響で日本周辺に流れれば、日本近海で船舶が航行できない状況も起きる。

さらに中国軍は台湾上陸を行う際に米軍の介入を考慮せざるをえない。米軍が介入すれば台湾侵攻の成功は遠のくので、本来は台湾だけを攻撃したいが、米軍が介入する可能性を排除できない。米軍が介入してから反撃するのでは遅すぎるので、初日から侵攻の障害となり得る在日米軍基地や自衛隊の基地などすべてを標的にして攻撃できるようにしておくのが中国軍の基本的な作戦だ。中国はそのための軍事力整備を進めている。

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