「台湾有事は日本有事」が当たり前である理由 「日本は巻き込まれなくてすむ」は非現実的

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――中国が台湾有事を起こす可能性が高まる時期はいつ頃だとみていますか。

それは、それぞれの国の動き次第だ。台米日が防衛力を増強して、簡単に攻めさせない形を作れば中国が動く蓋然性は低くなる。5年後には中国軍による台湾上陸能力は高まるほか、10年以上先になれば中国の核戦力も米国を抑止できると判断できるようになる。そして米国が介入しないだろうと中国が判断または誤算すれば有事が発生する可能性はさらに高まる。

国力がピークなので今のうちにやるのがいいのか、それとも経済が落ち目になっても軍拡はしばらく十分可能なので、着上陸能力や核戦力などを増強して台湾侵攻能力を高めるという時間をかけたほうが有利とみているかによる。

「台湾統一」は単なるスローガンに変わることも

また習近平氏という独裁者の時間軸で考えることもできる。彼は後継者を育てておらず、20年以上中国の最高指導者であり続ける可能性がある。今年70歳だが、85歳になってから戦争指導をするのは年齢的に厳しい。元気なうちに解決したいはずだ。

ただし、中国は武力行使をすることを決めている訳ではない。武力統一が可能な能力をつけたうえで台湾を屈服させたほうが安上がりなので、能力獲得と武力行使を混同しないほうがよい。台湾統一のような夢みたいな政治目標は最初のうちは本気でも、次第に相当難しいことがわかると、取り下げるわけにもいかないものの、最後には単なるスローガンに変わることがある。

習近平氏は合理的に考えられる人であり、彼の合理性にあわせて対応していけばいい。日米台は「台湾統一」が単なるスローガンになるよう目指し、習近平氏が「今年もまだ力不足だ。ほかにもっと重要な課題がある」と感じる状態を常に作り続けることが大切だ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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