「台湾有事は日本有事」が当たり前である理由 「日本は巻き込まれなくてすむ」は非現実的

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――米軍が台湾有事に介入して、それを日本が支援するから巻き込まれるということではなく、戦争開始時から巻き込まれるので「台湾有事は日本有事」なのですね。

中国がそう考えて準備しているということだ。日米は何もしていないのにいきなり攻撃されるかもしれないという点で「第2の真珠湾攻撃」になる可能性がある。日本もかつては真珠湾攻撃など発想すらなかったが、1930年代に軍事能力がついて、一撃でアメリカ太平洋艦隊を潰せるかもしれないと考えはじめ、それに向かって準備し、実際にやってしまった。

軍は作戦を遂行する際に最悪の事態を想定する。中国は当然米軍が介入する可能性を考えて動く。米軍を攻撃すれば、自衛隊が米軍を支援し、かつ自衛隊が反撃する可能性があるから自衛隊も攻撃する。中国軍が台湾に侵攻する時に日本は努力すれば巻き込まれなくてすむかもしれないという発想は非現実的、日本は主要な標的だとの理解がまず必要だ。

では、在日米軍を撤退させればいいという人もいるかもしれないが、そうなったら抑止が破れて、台湾と尖閣諸島を同時に攻め取る誘惑を中国に与える事になる。結局米軍撤退は戦争の引き金を引き、米軍がいない状態で日本は核兵器を持つ中国と戦うことになる。そんな戦争は絶対に起こさせてはならない。

中国がいきなり日米を攻撃する場合、何かしら開戦理由を考える。口実を与えなければいいという議論もあるが、ロシアがウクライナにやっていることを見ればわかるように理由はいくらでも作ることができる。6月に習近平氏が琉球(沖縄)について言及したが、沖縄の主権について屁理屈をこねる可能性も否定できない。

今後5~10年で抑止が破られる可能性

――日本も標的であれば、有事を抑止するためにどのような準備が必要ですか。

重要になるのは、日本がどれだけの能力を保持しているかだ。例えば、台湾の空軍基地では戦闘機をミサイル攻撃から守るために頑丈なコンクリート製の掩体(えんたい)という格納庫が整備されている。しかし、日本でほとんどの航空自衛隊基地には全機を格納する掩体がなく、あるのは千歳や三沢など一部の基地にすぎない。弾道ミサイルの奇襲攻撃を受けたら日本の大半の航空戦力は壊滅する。

日本は防衛予算が足りず正面装備をそろえるのに精一杯だったため、基地の強靱化や弾薬等購入が十分できていなかった。脆弱性が高く、継戦能力が低いのが日本の現状だ。

ただし、現在の中国は米国に勝利する能力がまだないため、抑止された状態だ。中国はこれを打破するため過去40年間、大軍拡を進めた。一方、日本や台湾は防衛予算がずっと横ばいだった。このままでは今後5~10年で抑止が破られる可能性がある。今成立している抑止を維持するために日本は防衛力を抜本的に強化する必要がある。

一番有効なのは、日本が生存力の強い反撃能力を配備することだ。これがあれば中国の台湾上陸作戦は確実に失敗する。つまり、中国は武力行使に着手できなくなる。

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