日本人は、だから「うつ」になってしまう うつが「働けなくなるリスク」の最大要因

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一方、米国の就業不能保険の支払内訳を見ると、精神疾患の割合はさほど大きくありません。トップはヘルニア系疾患(背痛、腰痛、リウマチなど)で30%、次に神経性疾患、心臓病、ガンと続きます。なんと精神疾患は5番目で全体の7.7%に過ぎません。前述したように日本は25%ですから日米では3倍以上の開きがあります(2014年Council for disability awareness調査)。

日米のうつ病を比較した別な調査結果もあります。日米両国の都市部で働く男女を対象としたアンケート調査です。うつ状態になることが「ある」と答えた人の割合は、米国で9.6%、日本で30.4%でした。なんとうつ病の出現率でも、日本は米国の3倍も高いのです。

そして、興味深いのがその原因です。日本は83%が「仕事上のストレス」と答え、米国は67%が「自分の将来に対する不安」と答えています。また「職場や学校での人間関係」をストレスの原因と答えたのは日本では44%ですが、米国でわずか18%でした。

このように、ストレスの原因に日米で大きな違いが見られます。米国では、将来に対する不安が大きなストレスの原因ですが、日本では会社の人間関係が最大のストレス要因なのです(2012年ニールセン・カンパニー調査)。

うつ病は日本、中国、韓国など東アジア圏に多くみられ、欧米諸国ではそれほどでもない、という説があります。東アジアの文化は集団主義的で抑圧的であるのに対して、欧米文化は自由で開放的であるため、という解釈です。また最近は文化的な違いよりも、そもそも遺伝的なものだという説もあります。いずれにせよ、人の心の動きはさまざまなファクターが影響し合う複雑系システムなので、原因を特定するのは簡単ではありません。

ただ先程のニールセン調査でも明らかなように、日本でのうつ病の直接的な原因のひとつが、会社の職場環境にあることだけは確かなようです。

解雇に怯えているのは、米国のサラリーマンなのに?

月曜の朝、気分が重くて体がだるい。それどころか日曜の夜から気持ちが暗くなってしまう。このような「サザエさん症候群」は、多くの日本のサラリーマンに見られる症状です。要は、会社に行きたくないのです。多くの日本人にとって会社、そして職場の上司や同僚たちとの人間関係がストレスの元凶です。では、なぜそれをストレスと感じるのでしょうか。

米国では日本と比べ、一般的に上司が大きな人事権(採用と解雇の権限)を持っています。だから日本以上に、ボス(上司)の存在は大きなものです。もしボスとの相性が悪ければそれは大変なストレスとなります。ボスから、いつクビにされるか分からないからです。ボスとの関係がこじれ、いきなり「君はクビだ!」と解雇を言い渡される場面を、米国の映画やドラマで見たことがあると思います。

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