
今からおよそ15年前に債務危機に陥ったギリシャは、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)から都合3度にわたって金融支援を受けた。うち2010年5月に実施された第1次金融支援の際、ギリシャはEUから530億ユーロを借り入れたが、ギリシャはその返済を予定より10年前倒しし、2031年までに完済する見通しになったという。
ギリシャの公的債務残高は劇的に改善した
すでにギリシャは220億ユーロを返済しており、残る310億ユーロを毎年50億ユーロ程度ずつ返済する方針だと伝えられている。ここでギリシャの公的債務残高の推移を確認すると、コロナショックがあった2020年には名目GDP(国内総生産)の203.6%まで膨張したが、以降は着実に改善し、2024年には156.1%まで低下している。

この間の公的債務残高の対GDP比率の変化の要因を①成長要因(実質GDPの成長)と②物価要因(GDP物価指数の変動)、③財政要因(公的債務残高の増減)の3つに分解してみると、2021年は成長要因の寄与が大きいが、2022年以降は物価要因の寄与が大きくなることがわかる。一方で、成長要因も改善に寄与し続けている点が重要だ。
ギリシャは他のEU諸国と同様に歴史的な高インフレに直面した。この高インフレが名目GDPを膨張させ、公的債務残高の対GDP比率を分母の面から低下させた。加えて、高インフレにもかかわらずギリシャの実質GDPは2021年から2024年まで年平均で4.8%も成長、そのパフォーマンスはEU全体(1.2%)を大幅に上回った。
つまり、高インフレのみならず好況を謳歌したことで、ギリシャは公的債務残高の圧縮に成功したわけだ。好況は主に2つの要因によると考えられる。1つ目が、2022年2月に生じたロシア発のエネルギーショックに伴う国際原油価格の急騰だ。このことが、原油の再輸出の拠点であるギリシャの経済にとって、強い追い風になったのである。
より重要なことは2つ目で、この間にギリシャは、政府機能の整理縮小に努めるとともに、労働規制の緩和などを通じてビジネス環境整備に努めてきた。つまり、需給の両面にわたる構造改革に努めてきたわけだ。そうした改革の痛みに耐えたからこそ、ギリシャは高インフレの下でも好況を謳歌し、財政再建にも弾みをつけることができたのだ。
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