ドイツ復活の時が来る「財政拡張」へブレーキ外し 旧議会で駆け込み改正なるか、市場予想超える財政規模
選挙からわずか1週間余りで財政運営の基本合意に至ったのは、強い危機意識からだ。

ドイツ経済は2年連続マイナス成長と構造不況に苦しんでいる。
ロシアによるウクライナ侵攻後、ロシアから安い天然ガスを買い、高品質の製品を作り、世界に輸出する経済モデルが崩壊。エネルギー調達費用の高止まりで産業競争力を失い、主力の化学産業などで空洞化が進む。
頼みの中国市場では、中国製EV車との競争に負け、販売不振に陥っている。厳しい財政ルールに阻まれ、機動的な財政運営ができなかったことも、景気悪化に拍車をかけた。高い技術力と勤勉な労働者が支えるモノづくり大国の面影はない。
そのドイツが急回復するとの観測が浮上している。2月23日に連邦議会選挙が行われ、次期政権の樹立を目指す二大政党が大幅な財政拡張に舵を切ることで合意したためだ。
「債務ブレーキ」を駆け込み改正
欧州連合(EU)の一員であるドイツは、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%未満に抑えるEUの財政規律に加えて、独自の財政ルール(債務ブレーキ)を持つ。
景気変動による歳出入を調整した後に、政府に認められる年間の借り入れ上限は、連邦政府がGDP比の0.35%、州政府が0%。財政収支を均衡化させることが義務づけられている。
両党は4日、①ドイツの再軍備と戦略的自立を確保するため、GDP比で1%を超える国防費を債務ブレーキの対象から除外すること、②州政府の借り入れ上限を現在の0%から連邦政府と同じ0.35%に引き上げること、③向こう10年のインフラの整備・補修やデジタル化対応に充てる総額5000億ユーロの投資基金を通常予算の枠外に創設することで合意した。
これらを合計すると、GDP比で年間2~3%程度の財政拡張に相当する。
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