何者かがユナイテッド航空のウェブサイトのほぼ完璧な複製をつくっていることに同社の弁護士たちが気づいたのは、今年の夏。
この複製サイトはフライト、ホテル、レンタカー予約用のボタンやメニュー、マイレージ確認や割引情報への青いリンクに至るまで、すべてが本家と同じだった。ユナイテッド航空のブランド名やロゴまで使われていた。
そこで同社の弁護士は著作権侵害を理由に、サイトの閉鎖を求める通告を正式に行った。
ホワイトカラーを不要にするトレーニング
複製サイトをつくった小さな会社の経営者ディヴ・ガーグは、すぐさまサイト名を「フライ・ユニファイド」に変え、ユナイテッドのロゴを消した。ユナイテッドの著作権を侵害することに関心はなかったからだ。彼の会社がUnited.comのレプリカをつくったのは、人工知能（AI）を訓練するトレーニングの場にするためだった。
ガーグの会社AGIは、ここ何カ月かで人気サイトを次々とコピーしてきた数あるシリコンバレーのスタートアップの1つだ。こうした企業は、AIシステムが自力でインターネットを操作し、フライト予約といったタスクの遂行を学習できるよう、人気サイトの再現に取り組んできた。レプリカサイトで使い方を学んだAIは、本物のサイトも使えるようになるという発想だ。
こうした「影のサイト」は、現行のチャットボットをAIエージェントに進化させる、テック業界の取り組みの重要な一部となっている。AIエージェントとは、旅行予約や会議設定、グラフ作成といったコンピューター作業をこなせるように設計されたシステムだ。今後数年で高度化していき、ホワイトカラー従業員の一定数を置き換えられるようになると考えている企業は多い。
「人間が行う仕事全体を取り込んだ訓練環境を構築したい」と、人気サイトの再現を手がけるスタートアップ、プレイトーのロバート・ファーローは語る。
