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出光興産が直面する「化石燃料回帰」への現実解、酒井新社長が吐露、環境の不透明感が増す状況下での「石油事業と脱炭素事業」のバランス経営

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酒井則明/さかい・のりあき 1961年生まれ。1985年神戸大学法学部卒業、当社入社。2010年徳山製油所副所長兼徳山工場副工場長、2022年取締役副社長執行役員、2025年4月から社長(写真:梅谷秀司)
7年ぶりの社長交代となった出光興産。国内の石油製品市場は縮小が続き、脱炭素関連事業の収益化が急がれる。現在の収益柱の石油事業と脱炭素事業をどうバランスさせていくのか、また投資と資本効率化のバランスをどう考えていくのか。4月に社長に就任したばかりの酒井則明氏を直撃した。

――一部の国や地域で化石燃料への回帰が見られます。

われわれの経営方針が大きく変わることはない。2030年、そして2050年までのビジョンはすでに示しており、それを前に進めていく。

新規事業としてSAF(次世代航空燃料)やe-メタノール、アンモニア、リチウム固体電解質など幅広く推進していくことは変わりない。

ただ、時間が経つごとに、こうした新しいエネルギーに移行していく道筋には不透明感が増している。ヨーロッパでもカーボンニュートラルに向けた動きがスローダウンしている。従来以上に既存の石油事業と新規事業のバランスを考えなければならない。既存事業でもしっかりわれわれの使命を果たしながら、新しい事業への布石を打っていかなければならない。

化石燃料事業比率の計画については見直しが必要

――2030年度に化石燃料事業の収益比率を50%以下に引き下げる計画を掲げています。2026年度からスタートする次期中期経営計画でも方針は変わりませんか。

化石由来の事業比率を半分以下にする方向性は「本気なんだ」ということを示すため、ある意味極端な数字で示している。この比率は役員報酬を決める際の指標にも組み込まれている。

ただ、比率は前中計を打ち出したとき(2021年5月)から今もほぼ変わっておらず(2023年度91.5%)、2030年までに50%未満にするのは現実的ではない。次期中計では必要な見直しをしないといけないと思っている。

――日量83万バレルの石油精製能力(2024年3月末)を2030年までに65万バレルまで減らす計画はどうなりますか。

石油製品の需要は毎年2~3%下がっているので、いつまでも今の精製能力を維持することは現実的ではない。かといって、それぞれの製油所の稼働率を均等に下げていくだけでは経営効率や生産性を考えると問題がある。どこかの時点でもう一段、製油所の数を削減することは必要だ。任期中に明確な方向性を示さなければならないと思っている。

ただ、脱石油、脱炭素のスピードがどの程度になるか、業界全体が老朽化した装置を運転している中で1カ所減らせばどのような影響が出るのか、慎重に見極めていかなければならない。

最近も大きな地震が能登であった。有事の際の復旧に必要なエネルギーも今のところ石油に勝るものはない。石油の重要性はしっかり考えながら、閉めるとすればどの時点でどこを閉めるのかは、しっかり検討しなければならない。

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