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「トランプ関税」でも安定成長に自信、日本ペイントHDの若月社長が掲げる「株主価値最大化」の道筋

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若月雄一郎/わかつき・ゆういちろう 1966年8月28日生まれ。東京大学法学部卒後、1989年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行、2000年メリルリンチ日本証券(現BofA証券)入社、2016年同社取締役、投資銀行部門副会長。2019年11月日本ペイントホールディングス専務執行役員、2021年4月代表執行役共同社長(現任)、2022年3月取締役(現任)
塗料で日本トップ、世界4位の日本ペイントホールディングス。地味な業界と思いきや自前成長とM&A(合併・買収)を組み合わせる戦略で6期連続増益を記録中。3月にアメリカ・コーティング会社の買収が完了したことで2025年12月期も大幅増益を見込む。もっとも、「トランプ関税」によって前提となる世界経済の先行きは見えなくなっている。どう分析して対応していくのか。投資銀行出身の若月雄一郎共同社長に聞いた。

地産地消型なので関税の影響は少ない

――トランプ関税で世界経済が大混乱に陥っています。

塗料ビジネスは基本的に経済成長とともに安定的に伸びる。われわれの事業の主力は建築用で、新築向けよりも塗り替え需要が中心で比較的安定している。地産地消型なので関税の直接影響も少ない。原料の中には関税で価格が上がるものあるが、原油価格の低下というポジティブな側面もある。

とはいえ、世界経済が大混乱して各国がマイナス成長になれば、やはり影響は免れない。住宅の買い替えや塗り替えを先延ばす動き、新築着工の減少も出てくる。われわれの売り上げ全体に占める割合は10%未満だが、自動車用塗料も厳しくなるだろう。

それでも、他の産業に比べれば相対的に底堅いことは間違いない。

――マイナス影響は避けられないとして、どの程度を見込んでいますか?

今は裏付けのある数字を出せない。影響を織り込んだ数字を出した以上、市場環境を言い訳にしないでやりたいと思っている。

――積極的なM&Aを実行してきましたが、経済環境の激変によって裏目に出ませんか。

もともと、M&Aでは極力リスクを抑えるように対象を厳選している。買収するのは利益率が高く、キャッシュフローが出ていて、経営陣が優秀な企業だけだ。M&Aが目的化すると高値掴みになりがちだが、投資銀行時代に多くの失敗例を見てきたので気をつけている。

過度に慎重になってリスクテイクをしないこともよくないので、健全なリスクテイクを追求している。

――3月に買収を完了したAOCはアメリカの会社です。大丈夫ですか。

その質問は「アメリカは大丈夫か」というのと同じだ。AOCは特殊なコーティング剤のメーカーで、インフラの保全を担っている。アメリカのインフラは老朽化しており、投資は絶対必要になる。不況でも利益を出してきた会社だ。

AOCが加わることで、今期はEPS(1株当たり利益)が12.5円上がる。これが多少落ちるとしてもAOCが赤字になるようなことはない。借入金は増えるが、AOCはキャッシュも生んでいるのでリスクは抑えられている。

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