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山陰合同銀行が「地元のために都市部で稼ぐ」ワケ、おひざ元の地域での人口減少をはねのけ4期連続の過去最高益をうかがう

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吉川浩/よしかわ・ひろし 1966年生まれ。関西学院大学卒業後、1989年山陰合同銀行入行。姫路・阪神北・岡山・米子支店長、山陽営業本部長などを歴任。2025年4月から現職(記者撮影)
おひざ元の地域での人口減少をはねのけ、4期連続の過去最高益をうかがう山陰合同銀行。島根・鳥取両県を地盤としつつも、山陽や関西地方、東京へ積極的に進出している。今や貸出残高の6割以上が山陰域外の都府県向けだ。
近年は企業買収や不動産投資などに用いられるストラクチャードファイナンスにも力を入れる。人口減少時代において都市部に活路を求める「ごうぎん(合銀)」の狙いを、4月に就任した吉川浩頭取に聞いた。

 

――吉川頭取自身、兵庫や岡山といった山陰域外での営業経験が豊富です。島根・鳥取両県を地盤としながら、なぜ積極的に都市部へ進出するのでしょうか。

地元に投資するためは、まずは地域金融機関が成長して体力をつけなければならない。そのためにも、山陰地方と比べて市場の大きい都市部に出て行くことが必要だ。一社一社、経営者とコミュニケーションを取って信頼関係を構築し、各地でのシェアを拡大させていきたい。

外へ「狩り」に行く人材を増やしたい

――とはいえ、地銀が都市部で攻勢をかけるのは簡単ではありません。

それぞれの地域に根ざしている金融機関があり、そういったエリアではわれわれが取引ができる企業は多くない。その代わり、個社にかける時間とエネルギーはわれわれの方が手厚いかもしれない。実際、山陽や関西の貸出金シェアは伸びているし、メインバンクを務める社数も増えている。

「合銀は低金利でバンバン貸している」と言われることもあるが、単に融資を増やしたいという動機で進出しているわけではない。不良債権化することがないよう、リスク管理もきちんとしている。

事務を担当していた職員にリスキリング(新しいスキルを学ぶこと)を行って法人営業を任せる、といったことも進めている。外へ「狩り」に行く人材を増やしたい。もちろん個人の意向もあるため、銀行の方針通りに配置転換が進むとは限らないが、今後はもっと加速していきたい。

――東京支店の行員も増やしています。

コロナ禍前は20人もいなかった。現在は約40人が在籍している。最終的には50人規模に持っていきたい。増やしているのはストラクチャードファイナンス向けの人員だ。東京におけるビジネスの柱に位置づけており、メガバンクや大手地銀を見習いながら推進していきたい。

ストファイには専門的なノウハウが必要だ。できるだけ専門部署に長く在籍してもらい、スキルを身に付けてもらう。LBO(レバレッジドバイアウト)や不動産ノンリコースローン、協調融資、海外向け融資などのチームを作り、専門性を高める。

――ストファイの残高は、目論見通り伸びているのでしょうか。

昨年3月末時点で2500億円だったストファイの残高は、足元では約3500億円に拡大している。LBOは当初の想定より少ないが、代わりに不動産ノンリコが伸びている。

今のところは他行が組成した案件に加わることが多いが、いずれは自行での案件組成にも挑戦したい。ストファイのほか、子会社のごうぎんキャピタルも東京に拠点を設け、エクイティ投資の機会を探っている。

将来的には、東京の部隊が案件の調達に専念する一方、島根県松江市内の本部が事務やリスク管理を引き受ける役割分担を図りたい。もちろんリスクを取るのは適正な範囲でだ。採算が合わない案件は遠慮することもある。

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