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クラシック音楽は「ビジネス」の論理と相いれない。一方、日本では音楽家もプロオケも多すぎる/『揺らぐ日本のクラシック』渋谷ゆう子氏に聞く

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『揺らぐ日本のクラシック 歴史から問う音楽ビジネスの未来』著者の渋谷ゆう子氏
[著者プロフィル]渋谷ゆう子(しぶや・ゆうこ)/音楽プロデューサー。株式会社ノモス代表取締役、香川県県民ホール文化事業プロデューサー、香川ファイブアローズ演出プロデューサー。著書に『ウィーン・フィルの哲学』(NHK出版新書)、『生活はクラシック音楽でできている』(笠間書院)など。(撮影:尾形文繁)
日本のクラシック音楽市場は400万人とされる。愛好者には経済的にゆとりのある人が多いが、演奏家や裏方は潤っていないという。著者は、世界の論文や各国の公表資料、自身のリサーチによってクラシック音楽の経済性を分析。そこから日本のクラシックが進むべき道を提言する。
揺らぐ日本のクラシック: 歴史から問う音楽ビジネスの未来 (NHK出版新書 739)
『揺らぐ日本のクラシック: 歴史から問う音楽ビジネスの未来 (NHK出版新書 739)』(渋谷ゆう子 著/NHK出版新書/968円/224ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──プロオーケストラが団員に支払う平均的な給与は、年間300万〜400万円であると。

華やかな世界に見えるクラシック音楽だが、携わる人の収入格差は大きい。

テレビでよく見る指揮者やピアニストは例外的な人たちだ。著名な指揮者だと1公演のギャランティーが1000万円超になることもあるし、全盛期の小澤征爾には700万円が支払われたという。単独で大きなホールを満席にできるピアニストやヴァイオリニストもよい報酬を得ているだろう。

一方で、それなりに名の通った国内プロオケでも、正規団員の年収は300万〜400万円というのが普通だ。

NHKの受信料を財源に交付金を受けているNHK交響楽団(N響)、東京都の外郭団体である東京都交響楽団(都響)などは平均年収700万円以上を支払うが、これは強力なバックありきのものだ。

幼い頃から楽器の鍛錬を続け、有名な音楽大学に進学し、留学して技術を磨いたうえで、運がよければ入団できる。そんな難関のプロオケでも、皆がうらやむ高収入は得られない。副業としてほかの演奏活動や、音大受験生への個人レッスンを行う団員も多い。

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