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【前編】ブームさなかに倒産したAI半導体ベンチャー社長の独白、IPO断念し半導体開発に専念したが“和製エヌビディア”にはなれなかった顛末

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リープマインド創業者の松田総一氏。写真は2020年当時、『週刊東洋経済』でも注目のベンチャーとして取り上げていた(編集部撮影)

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「彼らは、少し“早すぎた”んじゃないでしょうか」(AIスタートアップ幹部)

「成功すれば、日本のAI半導体のフラッグシップになっていたはずだったのに」(半導体設計エンジニア)

2024年8月20日、あるAI半導体ベンチャーの解散公告が、官報にひっそりと掲載された。

そのベンチャーの社名はリープマインド。2012年に設立された。当時は、後にグーグルが買収したことで有名なディープマインドのように、社名に「マインド」と付くAIベンチャーが流行っていた時期だった。「そのすべてを超えたい(リープしたい)」と、創業者の松田総一元CEO(以下、敬称略)が名付けた。

生成AIが爆発的にヒットして以来、その計算資源としてのAI半導体がブームになっている。

AIの受託開発からスタートしたリープマインド。ビジネスの限界が見えるたびに事業転換を繰り返し、現在ブームになっている「エッジAI」や学習用のAIチップの開発に挑んできた。

そのすべてに行き詰まり、解散することになった同社。業界の動きを3年は先取っていたであろうその軌跡は、現在のAI半導体ブームを俯瞰するうえで参考になるかもしれない。

受託開発で安定成長

「これは衝撃的だな」

2012年9月。画像認識AIのコンテストで、カナダのトロント大学のチームが開発した「アレックスネット」が2位以下に大差をつけて優勝した。

この結果を見て、「データと計算資源さえあれば、AIは無限に賢くなるのでは」と直感した松田。当時運営していた、エンジニアと企業をマッチングさせるサービスをすぐに事業譲渡。AIの開発に特化した会社を立ち上げた。2012年12月、27歳のときだった。

何がビジネスになるかというアイデアはなかった。それでも秋葉原でGPUを買い込み、基礎モデルの研究を始めた。実際のサービス開発は誰かに任せて、AIで何ができるようになるのかを企業に提案していくつもりだった。

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