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【後編】AIブームに倒産した日の丸半導体ベンチャーの教訓、打倒エヌビディアへの道筋つけたが“シリコンバレー”で受けた洗礼とは

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生成AIが爆発的にヒットし、その計算資源としてのAI半導体もブームになっている。にもかかわらず2024年、AI半導体ベンチャーのリープマインドが倒産した。業界の動きを3年は先取っていたであろう同社は、なぜ躓いたのだろうか。

2012年創業のリープマインドは、業態展開を続けながら先端開発に取り組んできた

特集「半導体 AIブームと"転換点"」の他の記事を読む

前編から続く)

エヌビディアとの真っ向勝負に挑んだリープマインドの松田総一元CEO(以下、敬称略)には、勝算があった。

「エヌビディアがアピールするGPUのスペックは、それを動かすソフトを最適化した状態での“ピーク性能”。実際にはほとんどのケースで、その数割のパワーしか引き出せていない」(松田)

確かに松田が指摘したとおり「エヌビディアのGPUは、AIモデルの学習において効率的な作りになっていない」ということは、すでに業界では暗黙の了解になっている。だからこそGAFAMは、自社で運用するデータセンター向けに専用の半導体をこぞって開発しているのだ。

リープマインドも「われわれはソフトウェアの会社。ソフトを作りやすい半導体を1〜2年以内にリリースできれば、まだ間に合うはず」(松田)と狙いを定めた。

データセンター向けの学習用チップに参入する時点で、松田は自ら立ち上げた会社を解散する「撤退ライン」を決めていた。従業員や債権者への支払いや、チップ製造のため委託先(ファウンドリー)に発注を出さなくてはいけないタイミングを考えれば、残された時間は長くはない。

出資者や当時60人ほどいた従業員にも「撤退ライン」を伝えていた。

ファウンドリー3社との交渉

だが、そもそもチップを製造するために、いくら必要なのかがわからなければ、資金調達の交渉もできない。仮に調達できても、ファウンドリーへの発注枠を確保しておかなければビジネスができない。

松田はファウンドリー事業を手がけているアメリカのインテル、台湾のTSMC、韓国サムスン電子との直接交渉に乗り出した。

2024年1月。松田はインテルのパット・ゲルシンガーCEO(当時)との直接交渉に挑んだ。

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