その職人の一人がリユース工房の立ち上げ時から関わり、ガラス絵も手掛けるほど器用な元建築士の松谷守氏(86)。
週3日の作業で1日に3~4点仕上げて出品数の50点をそろえているが、大変タイトなスケジュールだからこそ気が張り、いつまでも若々しく活躍できるのだろう。ほぼ全て落札されるのは、こうした職人たちの技術力の表れでもある。
新品同様なのに「リユース不可」のなぜ
では実際に粗大ごみはどのように収集され、リユース工房へ持ち込まれているのだろうか。筆者は不燃物収集車に同乗し、収集の様子を取材させてもらった。
豊田市では指定のごみ袋に入らないものは粗大ごみとなり、廃棄にあたっては粗大ごみ受付センターに収集を申し込むか、処理場に直接持ち込むかを選択する。
収集希望に応じて職員は排出場所へ向かい、事前申し込みの内容に照らし合わせながら「粗大ごみ処理手数料納付券」(以下、シール)の貼付の有無について確認する。
センターへの申し込みをしていないのに、シールを貼付すれば収集してもらえると勘違いしている人が多く、その際は回収せず残置となる。
申し込み状況が確認できれば、排出されたものがリユースできるかをその場で判断していく。判定基準としては「清掃をする程度でよいもの」としているが、リユース工房の技術力が高く、傷んだものを持ち込んでもピカピカの状態に戻してしまうため、高価に見えるものは多少壊れていてもリユースするようにしているという。
しかし、全てのものがリユースできるかというとそうではない。シールには「リユースを希望しない場合はチェックしてください」と書かれた欄があり、そこにチェックが入っていると、いくら程度が良くても排出者の意思を尊重して粉砕処理する。
新品同様なのにシールで「リユース不可」となっているため、リユースできないのは残念に感じた。聞けば、いくら不要物でも第三者に利用されるのを好まないケースや、自分が使っていたものを行政でリユースし販売されることを嫌うケースがあるという。さまざまな住民感情に対応するための配慮なのだ。
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