マンション管理人不足を解消"代務員"90代も活躍 シニアの"手を借りる"ぐらいがちょうどいい

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ところで日本には労働に関して年齢だけでなく、性別や学歴が長く大きな壁、先入観として存在してきた。「うぇるねす」の取り組みを見ると、人材不足が本格化した今、ようやくそうしたことに真剣に向き合うべき時代が到来したように感じられる。

筆者が主に取材している住宅を中心とする建設業界にも、先入観を払拭することで人材不足の課題に対応する動きがある。ハウスメーカーのAQ Groupの「特別採用枠」(募集期間11月~来年2月。翌年4月入社)がそれにあたる。

この枠は何らかの理由で高校に通えなかったり、途中退学したりした15~24歳の若者を対象にしたものだ。日本社会は一度、レールを外れた人に対して風当たりが強い。そうした状況に一石を投じる取り組みである。

風当たりが強いのは企業の側が受け入れる体制に慣れておらず、強い負担を感じるからだろうが、もうそのようなことも言っていられない時代だ。貴重な「人財」として活かすための努力を惜しむべきではないだろう。

最後に余談かつ月並みで恐縮だが、「ネコの手も借りたい」という言葉がある。いくら人材不足が深刻化しようとも本物のネコの手は借りられないが、シニアの手なら十分に借りられる。

年齢の先入観を払拭できるか

「戦力化」などというおどろおどろしいものではなく、シニアの人たちについては「借りる」というくらいでいい。そんなイメージだと彼らも仕事をしやすいし、雇用側も大きな負担を感じずに済むだろう。

今回紹介したマンション管理だけでなく、さまざまな分野に手を借りられる、活躍が期待できる仕事があるはずだ。

大切なのはそれぞれの職種の仕事内容を精査し、専門的な知識や技術、体力が必要な業務と、そうではない業務を分けること。後者についてはシニアの力を借りられることも多いだろう。

そう遠くない将来、シニアが今以上に労働力として求められる時代が間違いなく来る。その際に、そのようなメンタリティの労使関係が実現できれば、少しは明るい超高齢化社会を期待できるのではないだろうか。

田中 直輝 住生活ジャーナリスト

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たなか なおき / Naoki Tanaka

早稲田大学教育学部を卒業後、海外17カ国を一人旅。その後、約10年間にわたって住宅業界専門紙・住宅産業新聞社で主に大手ハウスメーカーを担当し、取材活動を行う。現在は、「住生活ジャーナリスト」として戸建てをはじめ、不動産業界も含め広く住宅の世界を探求。

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