高輪ゲートウェイ周辺開発でルミネが描く独自性 「ファッション業界は挑戦する姿勢が薄まっている」

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それが“ファッションのルミネ”へと生まれ変わったのは、「ユナイテッドアローズ」や「ビームス」など、セレクトショップが人気となった1990年代に入ってからのことだ。おしゃれに関心の高い女性に向け、人気のセレクトショップを導入していったのだ。

それも、ビル全体の顔になるような店構えにし、ファッションのイメージを打ち出すことに注力した。駅の上におしゃれな服のショップが並んでいる、オフィスを出て家に帰る前に、ショッピングできるというニーズをとらえ、今にいたる道を築いた。

現在、代表取締役社長を務めているのは表輝幸氏。同氏はJR東日本に入社し、2011年からルミネに出向して常務と専務を、2016年にJR東日本で役員を務めた後、今年6月からルミネの社長に就任した。仕事をご一緒したのは10年ほど前、ルミネを率いている時のことだった。追い風を受けながら、さらに前へ進もうとする強いエネルギーを感じたのを覚えている。

コロナ禍を経て、世の中は大きな転換点を迎えている。そんな中にあって、ファッションビルとしてのルミネは、これからどういった方向に舵を切ろうとしているのか、ファッションは人々にとってどういう意味を持つようになっていくのか、表さんにあれこれ質問した。

“挑戦する姿勢”が薄まっている

――コロナ禍を挟んで9年ぶりにルミネに戻られ、まずはどんな印象を抱かれましたか。

:社内についても、お取引先の会社についても、全体的に“挑戦する姿勢”が薄まっているように感じました。コロナ禍を含め、厳しい状況が続いたので、そうならざるを得なかった事情も理解はします。が、そういう局面だからこそ、前に向かって挑戦してほしいと思うのです。

代表取締役社長の表輝幸氏(撮影:梅谷秀司)

――何に対する挑戦なのでしょうか?

:私が以前、ルミネにいた時、お客様に「ルミネとして大切にしてほしいことは何ですか」とヒアリングする調査を行ったのですが、その時、一番多かった答えは「挑戦する姿勢」でした。

ルミネのミッションは「ライフバリュープレゼンター」であり、体現できていたということです。それが昨今、少し弱まっている。だからもう一度、そこに立ち返り、生きることの喜び、生きることの価値について考えてほしいとお願いしているところです。

――難しい課題ですね。

:簡単なことではないと思っています。私自身、今回、社長の任に就く前に一週間ほど休暇があったので、地方を観光しながら、生きる喜びとは何かについて、あれこれ悩みながら考えたのです。

観光とは「光を観ること」ですから、それを探しに行ったわけです。そして、自らへの戒めも含めて再確認したのは、元気な挑戦を続けなければいけないということでした。

――もともとファッションは、挑戦を得意としてきたはず。それが全体に弱くなってしまったのは、どんなところに理由があるのでしょうか。

:時代のスピードが速くなっていく中で、短期決戦的な視野になり、業績や売り上げに偏っていたところがあったのだと思います。利益を上げることは大切ですが、それありきではダメだということです。

――本来、何を大切にすべきなのでしょうか。

:日本には100年、200年と続いている企業が他国と比べてかなり多いといわれています。なぜ、日本に長寿企業が多いのか。私は日本人が仕事に対して抱いている精神性にあると考えています。

単に自分の利益のためだけでなく、世のため、人のため、社会のためという意識があるからこそではないでしょうか。この意識をファッション業界が少し忘れていたと思います。

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