企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。
いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第16回は、和光を取り上げます。
言わずと知れた銀座の「シンボル」
銀座四丁目交差点の角、由緒ある姿で佇んでいるSEIKO HOUSE GINZA(旧和光本館)は、多くの人の記憶に刻まれている。風格のある石造りの建物、屋上にそびえる大きな時計塔、優美な曲面を描いているウインドウ――銀座という街を象徴する存在の1つ言って過言ではない。
一方、「中の様子がわからなくて入りづらい」「高額品ばかりが並んでいるのでは」という懸念から、足を踏み入れたことがないという声を耳にする。実は私も気後れするところがあり、長年にわたって訪れてこなかった。数年前、初めて中に入ってみて、商品や接客の魅力を実感するようになった。
和光は1947年、服部時計店の小売り部門として世に生まれ出た。その後、扱う商品の幅を広げ、時計やジュエリーに限らず、セイコーのものに限らず、紳士・婦人用品、室内用品、食品など、暮らしを取り巻くさまざまなものを揃える小売店として今にいたっている。
和光はセイコーグループの1つであり、和光オリジナルのものも含め、独自の視点で商品を選んでおいている場。その意味では、百貨店やセレクトショップに近い存在と言える。
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